ジョージ・オーウェル、『1984年』の世界
時代は1984年。核兵器を使った第三次世界大戦を経て、オセアニアとユーラシア、そしてイースタシアという三つの超大国によって、世界は分割統治されている。
ただし三つの国の関係は、大戦が終わった今も、決して友好的ではない。それぞれの国境付近は紛争地域でもあるらしく、戦争状態はずっと続いている(と報道されている)。
ウィンストン・スミスが暮らすオセアニアは、国家の最高権力者であるビッグ・ブラザーによって統治されている。物資は欠乏し耐久生活を強いられているが、戦争が理由とされているので、これに不満を持つ国民はほとんどいない。
「ウィンストンは階段に向かった。エレベーターを使おうとしても無駄なこと。万事これ以上ないほど順調なときでさえ、まともに動くことはめったになかったし、まして今は昼間の電力供給が断たれている。(中略)階段の踊り場では、エレベーターの向かいの壁から巨大な顔のポスターが見つめている。こちらがどう動いてもずっと目が追いかけてくるように描かれた絵の一つだった。絵の下には、《ビッグ・ブラザーがあなたを見ている》というキャプションがついていた。」
(『1984年』ジョージ・オーウェル/早川書房)
オセアニアの国民たちは、思想や言語、趣味活動から恋愛に至るまで、徹底して国家から管理されている。その際に有用なツールが、テレビジョンと監視カメラの機能を併せ持つテレスクリーンだ。
街のいたるところや個々の家の中にまで設置されたテレスクリーンは、思想警察によって運営され、国民生活のすべてを監視し続けている。テレスクリーンの前で少しでも不穏な言動をした者は、たちまち検挙され、隔離されて思想教育を受けることになる。