(2)の「代替コントロール」とは、会社が一元的に社員をコントロールする代わりに、社員自身や社員同士の関係性によって、自分たちの行動を律する、ということだ。
(3)の「セルフマネジメント」は、文字通り、社員が自分で仕事の進め方を管理するという原則である。
(4)「徹底的なステークホルダーアライメント」とは、株主、顧客、他のチーム、自チームなど、ビジネスを進めていく上で関係するすべての個人やグループと合意を取り、認識を合わせ、方向性を合わせながら業務を進行することを指している。
一般的に、このような調整は管理職の仕事である。だが、セムコ社では、全社員に、ステークホルダーと認識や方向性をそろえる意識が求められている。
そして、以上の(1)~(4)が土台となることで(5)の「創造的イノベーション」が進められる。
自社への導入は
自発的な“スモールスタート”で
社員一人ひとりが生き生きと、自発的に働きながら、会社も成長を続けられるセムコスタイル。自社にもうまく取り入れられれば素晴らしいことだろう。
しかし、自社に当てはめると、とてもではないが非現実と感じる人がほとんどかもしれない。確かに、多数の規則があり、しっかり役職による階層構造が出来上がっている組織を、一朝一夕かつ全面的にセムコスタイルに変えるのは、とうてい不可能だ。
リカルド・セムラーCEOのような強力な意志とリーダーシップのもと、社員一人ひとりの意識を少しずつ変えていくしかない。
本書の著者、秦卓民氏は、いきなり全体を変えようとするのではなく、チームやプロジェクトといった組織内の小さなグループで実験するところから始めることを推奨している。
試行する中で、業務によっては従来の階層組織の方がうまくいくことが判明する可能性もある。要は、うまく導入できそうなところからスタートし、自社に合ったやり方をディスカッションしながら、自分たちで工夫していけばいい。その過程で、個々の社員の意識と自発性が育まれていくかもしれない。
まずは、本書でセムコスタイルの5原則をしっかりと理解することから始めよう。その上で、スモールスタートでの実験に取りかかってみてはいかがだろうか。
(文/情報工場シニアエディター 浅羽登志也)