こまめな消灯で
本当にお金は貯まるのか?

消灯する女性電気をこまめに消したり、風呂の残り湯を再利用するよりも、効果的で手っ取り早い節約方法がある Photo:PIXTA

 世の中が不景気になってくると「節約」が話題になることが増えてくる。書店には節約のノウハウを記した“節約本”が出回るようになるし、ファイナンシャルプランナーの中にも「節約」指南が得意な人たちもたくさんいる。

 実際に節約本などを見ると、“電気はこまめに消す”だの、“風呂の残り湯の利用法”だのといった、実に細かいことがたくさん書かれている。筆者はサラリーマンだったので、こういう節約ノウハウを見ると、業績悪化時における企業の予算削減と非常によく似ていることがよくわかる。

 業績が悪くなってくると真っ先に削られるのが3Kと言われる「交通費」「交際費」「広告宣伝費」だ。その理由はわかりやすいからで、「タクシーは使うな!」「飲み会は禁止!」「広告はなし!」等々、いずれも目に見えて、とてもわかりやすいものばかりである。

 しかしながら、企業が本格的にコストを下げるための構造改革をしようと思うなら、その方法はたった2つしかない。1つは製造業の場合、「製造原価を下げること」、そしてもう1つは「業務プロセスの効率化」だ。

 人員削減なども、こうした施策を検討した結果として出てくる方法論の1つにすぎない。ところが、この2つを実行するためには時間もかかるし、自社のみならず取引先との交渉なども必要になってくるため、すぐに実行することは困難だ。そこでわかりやすい3Kが登場してくるのである。

 さらにもっとバカバカしいのは、「コピーで裏紙を使え」とか、揚げ句は「トイレットペーパーを二重から一重にしろ」といった類いの指示だ。社員の気持ちを引き締めたり、危機感を植え付けたりするという意味においては一定の効果は見込めるかもしれないが、こんなことでまとまった経費削減の効果が上がるとはとても思えない。

 家計においてもこれは同じで、前述した電気の消灯とか風呂の湯の再利用などは、実行することで「自分はこんなに頑張ってるんだ」という意識を高める心理的効果はあるだろうが、実際に経済的な面で判断するとそれほど効果は高くない。

 節約するということ自体、別に悪いことではないが、節約するだけでは決してお金を貯めたり増やしたりすることはできない。お金を増やすためには具体的に目に見える形でキャッシュフローが生まれ、それを別の方法で貯蓄なり投資なりをしていくことが必要だ。つまり具体的な金額目標を設定して、節約したものを金銭に換算していかなければ、何もならない。