本部は原因究明もできないまま
時短希望店には法令順守を要求
01年の時点で、この問題は外部に公表されなかった。そして内部で是正をした、はずだった。ところがその時には、これら手当てのうち残業時間分に加算する金額の割合を、本来の1.25倍ではなく0.25倍分しか支払っていなかったのだ。
この計算式の誤りは、今年9月、01年とは別の加盟店に労働基準監督署が指摘して発覚したという。
原因について、SEJは冒頭のように「社員の理解不足」と説明した。しかし社内調査の結果、01年当時の対応時、例えば社会保険労務士のアドバイスを受けたかどうかなどの記録は残っておらず、役員会の議事録にも記載がなかった。このため、計算式の誤りの原因や、当時なぜ社外に公表しなかったのか、その意思決定の過程は不明のままだ。
当時、絶大な力でグループを率いていた現セブン&アイ・ホールディングス(HD)名誉顧問の鈴木敏文氏も、調査に対し「全く承知していなかった」と回答したという。
ところで、現在SEJをはじめとするコンビニ業界で最大の懸案となっているのは、人手不足に苦しむ加盟店に対し、24時間営業を認めるか否かという問題だ。
SEJは11月、これまで頑なに認めなかった時短営業を容認するとして、その手順を示した「ガイドライン」を加盟店向けに公表した。
ところがこのガイドラインでは、従業員の解雇や、深夜に勤務する従業員を日中勤務に転換する手続きがいかに複雑かを、労働基準法に基づいて詳しく解説。時短を希望するオーナーに対して、法令順守の徹底を求めている。
そんな本部が、過去に労基署の指摘を受けても公表せず、さらにその後の対応でも計算式の誤りを犯している。おまけに当時の対応や記録が残っておらず、原因究明につながらない。こうした状況で法令順守を声高に叫び、真摯に受け止める加盟店はいるのだろうか。