たとえばどこかの会社に就活をするときも、「私はタリン大学を出ました」と言いますよね。で、本来はその人が本当かどうかは証明書が必要になります。でも、会社の人が志願者のID番号を調べるだけで、「確かにこの人はこの大学を卒業した人で間違いない」ということがわかる、そういうふうにID番号が行き渡っていたのです。

世界最高齢プログラマーが、“電子国家”エストニアでシニア100人に聞いてわかったこと参考:実際のイーレジデンシーカードとそのキット
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 実際、オンライン申請をしてからイーレジデンシーカードが手元に届くまでは1か月ぐらいかかりました。非常にエストニアらしいなぁと感じたのは、「受理した」とか「審査を通った」とか、次から次へとメールで審査の段階が通知で来るんですね。その辺がすごく親切だと感じました。

 エストニアの場合、イーレジデンシーカードを取得するときにカードと一緒にカードリーダーもくださるんです。これにパチンと挟めば、このままパソコンのUSB端子に差し込むことができて使えます(注:日本では自治体がリーダーを配布していないこともマイナンバーが普及しない要因と言われている)。費用は申請のときに100ユーロ、受け取るときに3700円がかかりました(注:浜松町にある施設に出向き、手数料として30ユーロ相当)

官民の情報が1つの画面で表示されている

 それでは、イーレジデンシーで実際に何ができるのかというと、いまはただ覗くだけです。イーレジデンシーをとっても、エストニアの国籍も永住権も手に入りません。健康保険にも入っていませんので、私のデータは空っぽなんです。だから、エストニア人のように使いこなすわけにはいかないけど、ポータルサイトに接続してどのようなものかを覗き見ることはできるのです(注:イーレジデンシーカードがあれば法人登記、一部の口座開設、電子署名の利用ができる)

 もしかして、私のカードを誰かが盗み見ているんじゃないかしらって心配になっても、大丈夫。誰が私のデータを見たのか、記録が残っています。確定申告したから国が見たな、この間、処方せんを書いてもらったからお医者さんが見たんだな、などと誰が見ているかがわかるのです。心当たりのない人が見てはいけない制度になっています。

 面白いなと思ったのは、ショールームの方もおっしゃっていたのですが、「役所と民間との垣根を取り払っているのがわれわれの特徴である」ということでした。たとえば、これは健康保険情報の画像なのですが、ここには名前や識別番号、被保険者番号、かかかりつけ医という欄がありますよね。

世界最高齢プログラマーが、“電子国家”エストニアでシニア100人に聞いてわかったこと

 さらに、ここに個人保険というのがある。これはね、日本でも健康保険はありますけど、その同じページ上にね、民間の何とか保険に入っているといった情報を同じ画面で見ることができるのです。自分の健康のことについて見たい情報というのが、官民一緒になっているのです