電子政府は本当に高齢者のためになったのか
でもね、私はそれだけだとまだ納得できないの。だいたい役所の人っていうのは、みんな自分がね、自分のやっていることがいいというに決まっている。本音を知りたいと。おじいちゃん、おばあちゃんは、電子政府を嫌だけど我慢して一生懸命やっているのか、それとも本当に役に立つからやっているのか、知りたいと思ったの。
エストニアで知り合った(オンライン法人登記サービスを展開するSetGo共同創業者の齋藤・アレックス・)剛太さんにね、「アンケートなんかできたら面白いわ」と話していたら、「いま、やりましょう」って言ってくださったんです。すごいです。早いんですよ。
2日後に日本に帰るタイミングだと言ったら、「明日来てください」と。さらには、「ついでにイーレジデンシーの手続きも手伝いますからやっちゃいましょう」。早速、アンケート項目を一緒に作ったのです。
ところで、日本の企業は「高齢者のニーズ」の調査をたくさんおやりになりますよね。自分が高齢者ですから、たとえばね、あなたの年代を選んでくださいと言って、「10代、20代、30代、40代、50代、60歳以上」と並んでいたら、そういうのに限って捨てることにしています(会場笑)。
高齢者のニーズを聞くのに、なんで60歳以上がひとくくりなのですか。90代の人でも結構アクティブな人は多いのに。そうした高齢者の視点を入れてアンケートを行ったのです。
そのうえで、私が「これこれ、こういうことをやっているんでぜひ手伝ってください」とフェイスブックを通じて、剛太さんと英語で発信したんですね。そうしたら、「そんなことまで一生懸命に考えているんなら、ぜひ手伝いたい」ということで、エストニアの高齢者100人からの回答を集めることができました。
詳細は近々、剛太さんと発表します(注:12月17日に両者は都内で報告会を開催予定)。ですが、ここで結果を少し言いますと、なんと84%が「電子政府を使っている」と答えていました。「あなたの生活をより豊かにしたのですか」という問いには93%がイエスと答えています。
9割以上の高齢者が「電子政府が生活を豊かにした」と実感
つまり、ほとんど全員にとって電子政府が役に立っているのです。だから、政府の人の言っているのはうそじゃない。実感なんです、エストニアに住む高齢者にとっての。それで、電子政府のサービスでは、実際に何を使っているか聞いたら、最も多かったのがバンキングです。つまり銀行でした。
日本ではね、なかなかダイレクトバンキングとかオンラインバンキングを使っている人が少ないんですね。そう言うと、シニアの問題だと言われるのですが、そうでもないんですよ。そんなシニアの娘さんたちでもお金をオンラインで動かすのに躊躇する人が多いんです。日本と比べて、エストニアでは、シニアがバンキングを使いこなしているということが結構すごいなと思いました。
もう1つ感じたのは、英語です。ワークショップ会場のパソコンというのは、もちろんOSは英語ですが、英語の画面だって、おばあちゃんも孫も全然、抵抗がない。日本には、英語アレルギーがあるお年寄りが多くて。まあ、私も英語が駄目ですけど、駄目でもグーグル翻訳をして、やりとりはできてしまうんですよ。海外のメディアともよくわからなかったけど、グーグル翻訳でやりとりしましたから。
そんなこんなでエストニアに行って、たくさんのお友達ができました。結局、5泊6日でワークショップを2回やって、トークショーをやって、それからショールームに行って、それから、イーレジデンシーの申し込みをやって、アンケートの土台を作って……たくさんの経験ができました。剛太さんはじめ皆さんが協力してくださったからこれだけのことができたので、とてもうれしいと思います。本当に心から感謝しています。