「支援対象者は34歳まで」が
撤廃された引きこもり支援
2019年の1年を振り返ってみると、「引きこもり界」にとっては、エポックメイキングな年だった。
象徴的だったのは、首都・東京都で起こった変化だ。小池百合子都知事は、19年1月、「ひきこもり支援」の担当部署を従来の「青少年・治安対策本部」から「福祉保健局」に移管することを明らかにした。
その背景にあったのは、都内で活動する複数の引きこもり当事者グループや、KHJ全国ひきこもり家族会連合会の都内の4支部によるロビー活動だ。それぞれの当事者グループは、従来の“ニート”時代の名残りの「支援対象者は34歳まで」とする年齢制限の撤廃と、ヒアリングすら行わなかった青少年・非行対策の部局から「引きこもり支援」を切り離し、政策決定の協議会の委員に多様な当事者を加えるよう要望した。
こうして都は19年度、福祉保健局地域生活課を所管として新たな支援協議会を立ち上げ、引きこもり経験者らでつくる当事者団体やKHJ家族会、社会福祉、地域福祉、保険医療、就労支援などの専門家がバランスよく名を連ねることになった。こうした都の動きは、従来の時代に合わない「若者就労支援」を続けていた都内の市区町村、地方自治体にも波及効果をもたらした。
3月末には、初めて内閣府が40歳以上の「ひきこもり」実態調査を行い、国としてもようやく推計115万人以上という全容が示された。そして、引きこもりという状態は、社会経験者が多勢を占めることなど、誰もがどの年代になってからでも何歳でも起こり得ることが明らかになった。
引きこもりになる要因は、人それぞれ違っていて多様であるものの、他人事の問題でも個人の責任でもなく、将来自分自身や自分の大事な人の身にも起こり得ることが、少しずつ認識されてきたといっていい。
5月末の川崎市の通り魔事件や、その後に起きた練馬区の元農水事務次官による長男殺害などの一連の事件も、大きな衝撃を与えた。