ほんの少し前までは年輩者から「そんな格好をして…」と眉をひそめられる側だったが、今やアラフォーとなってみると若者の間で流行しているファッションに驚くことがあるもの。アラフォーの視点でみる、昨今のあの流行について。(取材・文/フリーライター 武藤弘樹)
「若者ファッションが受け入れがたい」は
中年の始まりの証拠
ダメージジーンズを履いているとそれを見た祖母から「なぜ破れている」「風邪をひく」「継ぎを当てろ」「もうそれは捨てなさい」と糾弾を受け、「こういうファッションなのだ」と説明するも「風邪をひくぞ」と念を押して脅されるだけで理解を得られなかったあのころ。「上の世代とはファッションの価値観が絶望的に合わない。なぜこれが理解できないのか」と思っていたのも今では20年近く前の話となったアラフォー男性たちは、現在自身が若い世代のファッションを理解できず、戸惑う立場となった。
街で見かけた奇天烈(きてれつ)なファッションやアイテムを見て、「今の若者はすごい格好していたな」と驚いていると次々に同様の格好をした若者を発見し、どうやらそれがトレンドであることを知り、自分の感性がすでに若者のそれでないことを思い知らされ途方に暮れる……中年の始まりであり、洗礼ともいえるこうした体験は、しかるべき年齢に達したなら多くの人がするものであろう。
若者のファッションに対する違和感や戸惑いを覚えた中年は基本的に黙々、鬱々とそれを咀嚼(そしゃく)するしかない。それでは哀れなのでせめて本稿ではこの種の戸惑いを中年筆者、および中年読者で共有し、傷のなめ合いを試みたく思う。