レビュー
「今、横浜と日本に必要なのはイノベーションだ」「横浜の経済、ひいては日本経済に刺激を与えたい」――本書『横浜イノベーション!開港160年。開拓者の「伝統」と、みなとの「みらい」』は「みなとみらい21」という都市開発プロジェクトを主軸に据え、横浜という都市の歴史を紐解くものである。前半部では横浜村の干拓・開発から、横浜港の開港、造船業による経済成長といった歴史をエッセイ風に紹介。後半部は一転、舞台を現代に移し、横浜に拠点を構える企業や、横浜市長へのインタビューを掲載している。
横浜人は一般に「進取の気質を持つ」「横浜港の開港以来、新しいものを受け入れる文化を持つ」と言われることが多い。だが果たしてそれは本当であろうか。今の横浜にイノベーションは起きているのだろうか。横浜人は本当にオープンマインドなのだろうか。
横浜で活動を行なってきた著者は、現代の横浜に対して以下のように警鐘を鳴らしている。「豊かで成功体験が大きい都市であるだけに、横浜の人々にとって、危機感を持つことは容易ではない。百歩譲って危機感を持っていたとしても、どのようにイノベーションを起こせば良いのかわからないという人も多くいることだろう」。これは横浜にとどまらず、かつて急激な経済成長と安定の時代を経験した後、ゆるやかな人口減少、経済的衰退を始めている日本の各都市においても言えることである。