熱波が各地で山火事を起こし、豪雨が川を氾濫させる……。異常気象の頻発で気候変動に対する危機感が高まる中、世界中の国や都市が「気候非常事態」を自覚し、温室効果ガス排出をゼロにすべく政策立案や実行への意思を示す「気候非常事態宣言(Climate Emergency Declaration=CED)」の表明が相次いでいる。しかし、そんな世界の潮流に取り残されるかのように、日本国内では長崎県壱岐市、神奈川県鎌倉市、長野県白馬村、長野県、福岡県大木町の5つの自治体が宣言したのみだ(2019年12月現在)。この温度差の背景には何があるのか。私たち生活者ができることは何か。気候変動問題の第一人者である東京大学名誉教授の山本良一氏と、ダイバーシティーの専門家、イー・ウーマン代表取締役社長の佐々木かをり氏が語り尽くす。
気候問題で世界と大きく隔たる日本
山本 もはや気候問題は省エネや再生可能エネルギーへの転換といった普通の方法では解決が難しくなっており、かねてから「Emergency(非常事態の認識)」と「Mobilization(社会的な動員)」が必要不可欠だと指摘されてきました。2016年12月には、何度も異常気象に見舞われてきたオーストラリアのデアビンという小さな町がCEDを議決。これが世界で初めての気候非常事態宣言です。最初は小さな動きでしたが、2018年8月にスウェーデンの15歳(当時)の少女、グレタ・トゥーンベリがスウェーデン国会横でストライキを始めると急展開します。彼女の活動はSNSで拡散され、メディアや政治家を動かし、欧州中で若者の気候ストライキが爆発的に拡大しました。これを契機に各地でCEDが一気に広がり、2019年10月末現在で世界23カ国、1175もの自治体が宣言に至っています。
佐々木 宣言が出されると、具体的にはどんな変化があるのでしょう。