高額療養費制度Photo:PIXTA

 まもなく2019年も暮れようとしている。残り数日、何事もなく、無事に年を越せることを願いたいが、なかには今年1年間に病気やケガをして、医療費がたくさんかかった人もいるだろう。

 家族みんなの医療費が10万円(または総所得金額の5%)を超えた場合、医療費控除を利用して確定申告すれば税金を取り戻せる可能性があるので、来年の申告に向けて準備を始めている人もいるかもしれないが、その前に確認しておきたいのが健康保険の「高額療養費」の請求漏れだ。
 
 医療費控除で取り戻せるお金よりも、高額療養費の申告による還付金のほうが、金額が大きくなることがある。

医療費控除は課税所得を引き下げ
所得税を軽減する仕組み

 医療費控除は、医療費がたくさんかかった人の家計に配慮した優遇税制で、所得控除の仕組みを利用して所得税を軽減している。患者が医療機関や薬局などに支払った医療費そのものが戻ってくるわけではない。

 所得税は、課税所得に一定の税率(5~45%)をかけて計算するので、控除が多いほど納める税額は低くなる。医療費控除は、その年の1月1日~12月31日までの1年間に使った医療費を、一定のルールに則って収入から差し引くことで課税所得を引き下げ、その結果、所得税が軽減される。連動して住民税も低くなる。

 医療費控除に計上できる金額は、1年間にかかった家族みんなの医療費のうちの10万円(総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%)を超えた部分。たとえば、支払った医療費の総額が30万円だった場合は、20万円を収入から差引くことができるので、所得税率が10%の人の場合は所得税が2万円安くなるというわけだ。

 少しでも節税できるのはありがたいが、かかった医療費がまるまる戻ってくるわけではない。