臨床試験の世界を進んで行くのは、サイエンスというよりアートに近い。患者にも、企業にも、そして投資家にとっても、それは大きな賭けだ。新薬候補の大多数は途中で挫折する。米国ではその最終ラインを何とか乗り越えた新薬が、研究室から市場に到達するまで10年近くかかることもある。その時点でようやく、世界で年間数十億ドルの売上高を稼ぎ、株価を大きく動かすチャンスが生まれるのだ。米食品医薬品局(FDA)の承認は、新薬が標的とする母集団にとって、既知の潜在的リスクを上回る恩恵をもたらすと判断されたことを意味する。ただ、FDAの視点からそれが何を意味するのかは、簡単に答えが見つからない。例えば、FDAの分析は、その疾患の影響がどれほど壊滅的か、あるいは対象となる病気に既に他の有効な治療法が存在するかどうかによって変わる可能性がある。2018年にFDAは17の新しいがん治療薬を承認し、それらの治験には計5157人の患者が参加していた。一方、同期間にFDAが承認した感染性疾患の治療薬は11にとどまるが、治験参加者は1万2000人以上に上っていた。また一部の希少疾患の治療薬はごく少数の患者のデータをもとに規制当局から承認されてきた。