2019年秋以降、マイナス金利政策の是非を巡る議論が世界的に活発だ。
9月に欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ前総裁は、マイナス金利深掘りなどの追加緩和策を強引に決定した。中央銀行であるドイツ連邦銀行の資料によると、その影響もあって11月時点のドイツでは、企業が保有する預金口座の58%、個人が保有する預金口座の23%にマイナス金利や口座維持管理料が適用されていた。
地域金融機関の中には個人の少額預金にも0.5%のマイナス金利を課すところが現れている。
ドイツには日本と同様に「貯蓄は美徳」というカルチャーがあるため、「真面目に貯蓄してきた人が罰を受けるこの政策はいったい何なんだ」という批判が渦巻いている。報道によると、クリスティーヌ・ラガルドECB新総裁のデビュー戦となった12月のECB理事会の声明文発表に当たり、マイナス金利の副作用に言及するよう要求していた理事が数人いたという。おそらくドイツ連銀総裁はその一人だろう。
そんな中、スウェーデンの中央銀行のリクスバンクは、12月19日に5年弱継続したマイナス金利政策の解除を決定。同国のインフレ率は目標の2%より低く、達成は23年後半とみられている。目標達成を重視するなら利上げのタイミングではない。実際政策委員6人のうち2人が政策変更に反対した。
しかし、ステファン・イングベス総裁ら主要メンバーは、ここでやめないと副作用が強まってしまうと懸念した。解除と同時に発表した金融政策レポートでは次のように述べている。「もしマイナス金利がより恒常化すると人々が認識したら、さまざまな経済主体が経済の発展にネガティブな行動変化を起こすリスクがある」。