ベーシックインカムとの最大の相違点は
継続所得か一時所得か

 そして、今回の前澤氏の「社会実験」がベーシックインカムと異なる2点目にして最大の相違点は、ベーシックインカムは将来も継続的に存在することが期待される所得であることに対して、今回の実験が「1年限りの収入増」であることだ。

 一定の収入が「将来も継続的に」期待できる予期可能性が、ベーシックインカムの大きな長所なのだ。

 例えば、毎月7万円のベーシックインカムがあることを期待できれば、夫婦と子ども1人で21万円の月収があるので、子どもを持つ若い夫婦の一方が、会社勤めをするのではなく、「役者を目指したい!」といった夢に賭ける人生を送ることができるかもしれない。

 ベーシックインカムの存在は人生設計を大きく変える要因になり得る。他方、1年間の支給で、ベーシックインカムの効果を見ようとすることには無理がある。

 例えば、低所得・小資産の家庭の大学生100人に、向こう10年間毎年100万円を支給すると、社会実験の総予算は同じく10億円だが、人生設計が変わる学生が何十人も出たかもしれない。

 もちろん、ランダムに選ばれた当選者の中には、実験対象として興味深いサンプルが混じるに違いないが、仮にベーシックインカムを意識した社会実験を行うのであれば、対象者の選定を含めてリサーチデザインを行った上で実施しないと少々もったいないように思われる。

 総体として、今回の前澤氏の実験は、「ベーシックインカムの実験ではない」と理解するべきだろう。