大病院は専門的な治療に特化し、診療所や中小病院は慢性期の治療や日常的な健康管理を行う――。医療機関の役割分担を明確にし、病状に合わせて病院や診療所を使い分けてもらうことを目指して、2016年度に始まった「紹介状なしの大病院受診時の定額負担」。
この制度の導入によって、診療所や中小病院の紹介状(診療情報提供書)を持たずに大病院を受診した患者からは、医療費の一部負担金(年齢に応じて医療費の1~3割)に加えて、特別料金を徴収することが病院に義務づけられた。
当初、対象になったのは、おもに入院用のベッド数が500床以上の大病院だったが、早くも2年後の診療報酬改定で400床以上の病院に拡大。そして、今年4月から、特別料金の徴収義務化が200床以上の病院にまで拡大されることになったのだ。
紹介状なしの大病院受診患者は
制度導入後に減っているが……
日本では、小さな診療所だろうが、高度な医療機器の揃った大学病院だろうが、受診する医療機関を患者自身が自由に選ぶことができる。日本の医療の特徴のひとつにアクセスの良さがあげられるが、「いつでも、どこでも、だれでも」の標語に象徴される通り、日本全国どこの医療機関でも、健康保険証1枚あれば治療を受けられる。
フリーアクセス制の医療では、「設備の整った大病院のほうが安心」「有名な病院に通いたい」という個人の願望を満たすことが容易になる。医療を受ける患者にとっては自由度が高く便利な制度だが、社会全体で見ると弊害も大きい。限られた医療資源を効率よく使うという観点では、人材的にも、財政的にも無駄遣いにつながっているからだ。また、重症、軽症を問わずに、大病院に患者が集中することで、病院で働く勤務医に過重労働を強いる原因にもなっている。
そこで、日本人に多い大病院信仰を改めて、超高齢社会に対応できる医療システムを構築するために、2016年度の診療報酬改定で導入されたのが、「紹介状なしの大病院の受診時定額負担」だ。
診療所や中小病院の紹介状なしで一定規模の大病院を受診した患者からは、医療費の定率割合の自己負担分に加えて、定額負担を徴収することを病院に義務づけだのだ。
定額負担の金額は病院の裁量で決められるが、最低料金は初診時5000円以上、再診時が2500円以上となっている(歯科は、それぞれ3000円以上、1500円以上)。