米国と中国共産党の地政学的争いの行方は、その一定部分が南アジアと東アジアの諸国・地域の対応にかかっている。彼らは、この地域の支配を目指す中国政府の戦略を受け入れるのか。それとも、独立維持のために立ち上がるのだろうか。香港の自由を抑圧しようとする中国の行動は、中国の地域覇権がどのような姿になるのかを予見させるものだ。台湾の総統選挙では特にこれが大きな争点になっている。11日の投票で、台湾の事実上の独立が多くの市民の支持によって再確認されれば、近隣地域での中国に対する嫌悪感の証明となり、米国のインド太平洋戦略への後押しとなる。各種世論調査では、民主進歩党(民進党)候補で現総統の蔡英文氏が大幅にリードしている。民進党は、台湾の独立と米国との協力関係強化に前向きだ。蔡氏が率いる民進党は2018年の地方選挙で大敗し、同氏はその責任を取って党首辞任を強いられた。しかし、中国による香港市民抑圧や、習近平中国国家主席による中国本土と台湾の統一要求は、蔡氏の人気復活につながった。これは台湾市民が、中国は「一国二制度」の約束を守らない国だとの結論に至ったためだ。
【社説】香港デモが後押しする台湾の総統選
蔡英文氏の勝利は中国の地域覇権確立に打撃となる
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