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12時間拘束で
女性の日給は4万前後

 今、“TOBITA”の名は世界にも轟いている。実際、新地内を歩いていると、英語表記のチラシもあり、外国人観光客の出入りも激しいことがわかる。だが、これら国内外の観光客たちは、やはり冷やかしに過ぎず、大勢の人が集まったからといって、新地内の “料亭”を利用する客が増えたという訳ではなさそうだ。

 国内外の大勢の人たちにその名を知られることと、ここを利用することは違う。先に紹介した新地で「お運びさん」として働いていたという女性は、その実情をこう明かす。

飛田新地に異変、外国人や家族連れの見物で「観光地化」が進む背景(下)G20開催時の飛田新地。全店が臨時休業した

「去年のG20への協力で、新地の店は全店休業しました。これは店や、そこで働く女性たちにとっては大損害です。でも、国を挙げてのイベントに非協力的という訳にはいきません。それでも私たちも生活があります。そういったところも偉い人には考えて貰いたいです」

 さて、前出の「お運びさん」女性によると、今、飛田新地で働く女性は、20代前半から40代くらいまでの年齢が多く、この商売一本で頑張っている人もいれば、会社員や美容師など専門職の職業を持つ人もいる。なかには主婦もいるという。

 飛田新地にある「料亭」で客が支払う料金は、15分の接客で1万1000円、20分で1万6000円、30分で2万1000円、45分で3万1000円、60分だと4万1000円…と、概ね15分ごとに1万円刻みで加算されていくシステムとなっている。延長料金は10分で1万円、30分で2万円だ。

 諸説あるが、この代金のうち、1000円が客引きを担う「やり手婆」の取り分で、残りを店と「お運びさん」女性で折半するのだという。「お運びさん」「やり手婆」、どちらも頑張れば頑張っただけ収入となる完全歩合制だ。

 ここ飛田新地では、1日当たり手取りで15万円程度稼ぐ「お運びさん」女性もいるという声も耳にする。たしかに1日に「60分コース・4万1000円」で7、8人接客すれば、この額になるが、ここまで稼ぐのは、今では、ほんの一握りの人気者だけだそうだ。

 短時間の接客でリーズナブルな価格設定がウリの飛田では、「20分コース・1万6000円」を選ぶ客が多い。なので、今、一般的な「お運びさん」は、1日に12時間拘束、5人か6人程度の接客で4万円前後、客入りが多く8人、9人と運よく数をこなせば7万円弱の手取り収入だといわれている。