堀場雅夫・堀場製作所会長

 堀場雅夫(1924年12月1日~2015年7月14日)は、京都大学理学部物理学科在学中の1945年10月に堀場無線研究所(現堀場製作所)を創業した。今でいう学生ベンチャーの元祖だ。

 計測機器・分析機器の大手に成長し、71年に大阪証券取引所と京都証券取引所に上場するが、その際に堀場が宣言したのが「社長50歳定年制」だった。企業トップは最も活躍しているときにこそ後進に道を譲るべきだというのが、堀場の考えだった。そして78年、53歳のときに実際に社長を退任する。

 会長に就任したのを機に、堀場は社是を「おもしろおかしく」と定めた。従業員が「おもしろおかしく」仕事をすれば、発想力や想像力が増すとともに、効率も上がり企業価値が高まるという思いが込められている。社員に対しては、利益を公正に配分したいという発想の下、社員の福利厚生面から金融、保険、旅行等の面倒を見るホリバコミュニティ(HOCOM)という会社を設立した。

「堀場製作所は徹底的に合理化して稼ぎまくる。HOCOMは徹底的に“ナニワ節”で社員にサービスする。この二つが車の両輪の機能をしてウチは走っているんです」と、堀場は当時の「週刊ダイヤモンド」誌上で語っている。

 その堀場が週休3日制を始めたのは、今回のインタビュー記事にあるように86年のこと。ただし、その約15年前、同社が完全週休2日制を導入した72年ごろには「次は週休3日」と構想していたという。

 昨今、働き方改革の新たな取り組みとして週休3日制を導入する企業が増えている。例えば日本マイクロソフトは2019年8月に実験的に実施したところ、社員1人当たりの労働生産性が40%向上したという。労働時間が減ることで、限られた時間の中で成果を上げるという意識が高まるのかもしれない。

 一方、1日増えた休みの間に何をするか、有意義な時間の過ごし方が新しいテーマとなるようだ。「仕事を離れてやりたいこと」を明確に持っていないと、時間を持て余す可能性が出てくる。堀場もその点を懸念している。

 1日増えた休みに「幸福とは何か」「真の豊かさとは何か」を考え直す――。人生を“おもしろおかしく”過ごすことに重きを置いた堀場は、日本人にそれを訴えたかったのだろう。(敬称略)(ダイヤモンド編集部論説委員 深澤 献)

新しい“1日の休み”が
人と企業に何をもたらすか

堀場雅夫会長に聞く

1988年1月2日号より

──堀場さんは15年も前に週休3日を言い始めたそうですね。

 いや、難しい考えやなしに、2日休めるようになったら、次は3日やな、ということなんですわ。ウチが週休2日制を導入したのは確か1968年からなんですが、そのときは月に1回だけ土曜日を休みにして、その後、徐々に休みを増やしていって5年間かかって完全週休2日制になったんです。72年のことです。それで、週休2日制が完成したら、次は週休3日を考えていこうやないか、と。まあ、進歩の法則ですな。

 そのときはあれこれやってるうちオイル・ショックが起こって、そのままになってしまったんですが、今回は3年くらい前から検討を始めて、86年4月にまず月に1回、平日を休みにしよう、と実行に移したわけなんです。