「ぶらさがり取材」で経営トップがうっかり失言してしまう3つの理由経営者がつい「余計な一言」を言ってしまう理由とは? Photo:PIXTA

政治の世界に限らず、“失言”で組織にダメージを与えてしまうのは経営者も同じだ。中でも、会見を乗り切った安堵感からか、失言が飛び出しやすいのが「ぶらさがり取材」の場面だ。なぜ経営者は、余計な一言を言ってしまうのか。元記者でPR・危機管理コンサルタントの中村峰介氏が解説する。(危機管理コンサルタント 中村峰介)

「取材を受けてくれれば動画を消すなんて、そんなこと言ってるヤツの話が聞けるかって」
「まるで暴力団と一緒でしょ、それじゃ」
「殴っといてね、お前、これ以上殴ってほしくないんならやめたるわ、おれの言うこと聞けって。バカじゃねぇの」――。

 これらの発言の出所は、顔にモザイクのかかった怪しげな人物へのインタビューではない。元総務事務次官、この1月初旬まで日本郵政の代表執行役副社長だった鈴木康雄氏の肉声だ。いかにも不機嫌そうな太い声が、テレビとネットで全国にまき散らされた。

 かんぽ生命保険の不正販売を報じたNHKの番組「クローズアップ現代+」に日本郵政グループが抗議していた問題で昨年10月3日、国会内で開かれた野党合同ヒアリングに出席した後、記者に囲まれた「ぶらさがり」取材に応じた際の音声だ。動画・静止画とも確認できないので、録音のみ行われたようだ。冒頭、記者が「オンレコで……」(記事にする前提で)と断っているが、聞こえなかったのか、あるいは確信犯か、とにかく鈴木氏は怒りをぶちまけた。

 増田寛也・元総務相を社長に迎え、体制一新した日本郵政だが、あの「音声」が社会に与えたマイナスイメージはそう簡単に払拭できないだろう。