日本独特の風習「ぶらさがり」
記者と企業、双方の思惑とは

 ぶらさがりとは通常、記者会見など公式な取材セッションの終了後、登壇者が退出するまでの間、名刺交換を兼ねて記者の質問を受けることを指す(政治取材でもぶらさがりはあるが、本稿は企業取材に限定する)。

 大企業トップに顔と名前を売り込みたい、経営者の本音を聞き出したい、1対1の状況で内緒話をしたい――。記者の目的はさまざまだが、興味深いのは「大事なことは会見の質疑応答では聞かず、その後のぶらさがりで(できれば1対1で)聞きたい」という記者が多いことだ。

「ヒラバ(平場)で持ちネタをばらしてどうするんだ」

 筆者は記者時代、先輩からよくこう言われた。つまり、ライバル社の前では大事なことは隠し、取材対象と1対1に近い状況で核心を突く質問をぶつける。それでこそ特ダネが取れるのだ――と。

 ネットで生中継される会見が増え、記者の質問技術や内容に厳しい目が注がれる時代になっても、やはり、ぶらさがりはなくならない。

 特ダネを欲する記者の意識は相変わらずだが、一方で、会見する企業側にも「(会見で)真意は伝わったか?変な記事にならないか?」という不安がある。会見後のぶらさがりは、企業にとってもその不安を解消し、あるいは記者のちょっとした誤解を微修正する貴重な時間なのだ。

 だから、欧米企業の外国人トップが会見後、さっさと退出するのに対し、日本企業では経営幹部がぶらさがりにある程度、付き合う伝統がある。双方のニーズがマッチし、この日本的な風習は今も続いている。

ぶらさがり取材で
失言を生む3つの要因

 ぶらさがり取材における企業にとってのリスクは当然、経営幹部の「失言」にある。冒頭の鈴木氏のケースの詳細は分からないが、ヒアリングを終え、気が緩んだタイミングゆえの発言だったことは間違いない。失言を生む第一の要因は、強い緊張が一気に弛緩(しかん)したとき「心の防波堤」が下がることにある。