9割の人が陥る「もったいない」の罠

 eスポーツでは、とにかく状況が動き続けています。プレイヤーは常に新しい一手を模索しており、ルールも変わります。ですから、あまり重厚な計画を立ててもうまくはいきません。現実の方が、予想を裏切ることが常だからです。現在のベストを模索するものの、それはあくまでそのときのベストでしかありません。「今日の正解は今日だけのもの」なのです。
 こうした状況で重要になるのは、とにかく「こだわりを捨てること」「常にゼロベースで考えること」です。

 例えばメーカー側が、ゲームのルール自体に調整を入れてきた場合。調整によって自分が使っているキャラクターの戦力が変更され、強力な攻めに使える技が追加されたとします。そのキャラクターがそれまで強力な守備戦法を得意としていた場合、多くの人が、

それまで積み上げてきた守備の戦法はそのまま
   +
新しい攻め技を組み込む

というやり方をしてしまいがちです。

 それまでコストをかけて作り上げた守備戦法を捨てるのは忍びないから、プラスアルファで対応しようと考えてしまう。僕は、このやり方は高いレベルになればなるほど通用しなくなると思います。
これはたとえるなら守備主体のチームに、強力なフォワードが加入したようなもの。それまでのチーム方針や計画は一度忘れ、新戦力も含めたメンバーでチーム方針をあらためて考える必要があるのです。結果、攻めを主体にした方が効率がいいかもしれません。また、仮にそれまでと同じく守り主体でいくとしても、具体的な戦い方は従来のものとは異なるはずです。それを従来の戦法に接ぎ木する感覚でいると、不自然で効率の悪いものになってしまうのです。

 もしも最初からその戦力なら、自然にゼロベースで考えたはず。なのにそれを忘れて、自分がこれまで費やしたコストに気を取られてしまう。自らが作り上げた財産に縛られて、ついもったいないと考えてしまう。僕を含め多くの人が、よく陥る罠です。