政府が前面に出てこられない
特別措置法の2つの大きな問題点

 以上から明らかなように、新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正法が成立して政府が緊急事態宣言を出せるようになったからといって、民間の興行を強制的に中止させる観点からはほとんど実効性がないのです。

 ところで、ここまでいろいろと細かい問題点を列挙しましたが、大枠で考えると、問題点は2つに集約されるのではないかと思います。

 一つ目は、法律上、要請などの具体的なアクションの主体としては都道府県知事だけが担っていて、政府、つまり国が前面に出ることをまったく想定していないということです。

 K-1の興行で実際に起きたように、会場の地元の知事が自粛を要請するだけでは、興行をやらないと会社が潰れるなどの事情がある場合は、主催者は興行を強行するのではないでしょうか。

 興行を主催するのが地元密着の会社ならともかく、日本全国で興行を行っている企業の感覚からすれば、国(=総理大臣や担当大臣)の要請や指示なら重く受け止めるでしょうが、都道府県知事に指示されるだけでは、特に法律上の罰則も補償もない中で、それにすぐに従う気にはならないと思います。

 そう考えると、この特別措置法の立て付けが、政府が大方針を決め、それに基づいて地方のことは地方(都道府県知事)がやる、という平時の行政の延長になっていることに、根本的な問題があると言えます。

 やはり緊急事態宣言を出すような非常時には、もちろん初動は都道府県知事が対応すべきであるものの、国が前面に出て対応できるような法律でないと、意味がないのではないでしょうか(ちなみに、まったく同じ議論が災害対応の法律にも当てはまります)。

 二つ目は、緊急事態宣言が出された場合でも、感染防止のために民間などに協力を求める際の都道府県知事のアクションが“要請”か“指示”に限定されていることです。