山手線最古の木造駅舎だった原宿駅の駅舎が、96年の歴史に幕を下ろした。同じく古い歴史を持つ東京駅の駅舎は復元工事を経て永久保存されることになったのに対して、旧原宿駅は解体が決まっている。ともに皇室とゆかりが深いなど、共通点も多い東京駅と原宿駅の歴史を振り返る。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

96年の歴史に幕を
下ろした原宿駅舎

96年に歴史に幕を下ろし、解体される原宿駅の駅舎永久保存となった東京駅に対して、解体が決まっている原宿駅の旧駅舎。鉄骨レンガ造りの東京駅と異なり、木造で耐火性に問題があるのがその理由だ Photo:PIXTA

 1日の乗車人員が46万人を超える日本有数のターミナル駅、東京駅。1914年に建てられた鉄骨レンガ造りの丸の内駅舎は、震災や戦災、あるいは幾度となく浮上した再開発計画をくぐり抜けて、今も東京のシンボルとして存在感を示し続けている。

 その東京駅から、皇居や赤坂御所、明治神宮外苑などを挟んで、山手線の反対側に位置するのが原宿駅だ。東京駅丸の内駅舎が都内に現存する最古の駅舎であるのに対し、原宿駅の駅舎は都内に現存する最古の木造駅舎であった。

 1924年に誕生したこの駅舎は、15世紀から17世紀にかけて北ヨーロッパやイギリスで流行した「ハーフ・ティンバー」と呼ばれる建築様式を取り入れて、装飾材として前面に露出した柱などの枠組みと白い壁、そして屋根の上に乗った八角の尖塔が特徴的な、街のシンボルとして知られている。

 しかし、東京オリンピックの競技会場、代々木競技場の最寄り駅となる原宿駅では、コンコースやホームの混雑緩和とバリアフリー化を進めるため、2016年から駅舎の新築工事と、従来は初詣の際に使用していた臨時ホームの常設化工事が進められていた。このたび新駅舎が完成し、3月21日の始発から供用を開始したことで、旧駅舎は96年の長い歴史に幕を下ろすことになった。原宿駅は、3月14日に開業したばかりの高輪ゲートウェイ駅を差し置いて、山手線で最も新しい駅舎を持つ駅になったというわけだ。

 貴重な文化財として保存を望む声も多かったが、JR東日本は駅舎の老朽化が進んでいること、原宿駅周辺が防火地区に指定されており、旧駅舎は耐火基準を満たさないことなどから、安全面を理由に旧駅舎の解体を決定。今後、防火地域の基準に適した材料を用いて、旧駅舎のデザインを出来る限り再現した新たな駅舎を建設する予定としている。