大手証券会社のシティグループ証券が、都内のホテルの売買をめぐる裁判で訴えられている。しかもその過程で、売買時に原告側の代理人だった弁護士が、かつてシティ側の顧問だった疑惑も浮上。証券会社のコンプライアンスが問題視されているさなかだけに、その姿勢を問う声が上がっている。

 大型公募増資に絡むインサイダー情報が野村証券などから漏洩していた問題を受け、大手証券12社は8月7日、金融庁から求められていた「法人情報管理に関する自主点検」の結果を公表した。

 野村と大和証券グループ本社を除く10社はいずれも不正な取引への関与はなかったというが、実はその中の1社が今、「不法行為」で訴えられている。その会社とはシティグループ証券である。

訴訟の舞台となったアートホテル大森。浜松町のホテルと合わせ鑑定価格は少なくとも130億円とみられているが、シティグループ側は50億円で手に入れたとされている
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 原告は、不動産のサブリース事業などを行うアムス・インターナショナルの子会社アムス・アセット(現・東京アセット)。同社が所有していた2棟のホテルをめぐるトラブルで、グループ企業のシティグループ・プリンシパル・インベストメンツ・ジャパンと共に13億2070万円の損害賠償を請求されているのだ。

 原告代理人の弁護士はこう語る。

「この訴訟は単なる不動産取引をめぐるトラブルではない。シティグループ証券のコンプライアンスにも関わる大きな問題だと認識している」

 かなり複雑な話なので順を追って説明していこう。まず、舞台となったのは、「アートホテル浜松町」と「アートホテル大森」という二つのシティホテルだ。

 羽田空港からのアクセスがよいことから、出張族や東京観光のファミリー客などが多く利用しているこれらのホテルの「信託受益権」(資産から発生する経済的利益を受け取る権利)をアムス・アセットがある会社に売り渡そうとしたことが、すべての発端だった。