牛丼チェーン吉野家を展開する吉野家HDが20年2月期決算でV字回復を果たし、最終黒字に転換した。新規顧客獲得のための新商品の拡充策が奏功した。新型コロナウイルスの感染拡大の中でも足元の業績は踏みとどまっており、「コロナはチャンス」と強気の姿勢だ。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)
吉野家がV字回復に成功し黒字化
営業利益は前期の39倍に
牛丼の老舗が“大赤字”から、V字回復——。
吉野家ホールディングス(HD)が4月14日に発表した2020年2月期決算。売上高は2162億円で、前年同期から6.8%の増収。営業利益は39億円で、前期の営業利益1億円から大幅な増益となった。純利益も7億円で着地し、60億円もの最終赤字に陥った前期から見事にV字回復を果たした。
回復の要因は、主力事業の牛丼チェーン「吉野家」のテコ入れの成功だ。
吉野家の近年の課題は、客層の偏りと高齢化だった。イートインは、男性客が8割と圧倒的に多い。加えて、「訪れるサラリーマンの年齢が高齢化していた。リタイア後の客の比率も多い。新規客層が取り込めていなかった」(吉野家関係者)。
この課題を克服すべく打ち出した施策が、新商品の拡充だ。中でも19年3月に発売した「超特盛」が大ヒットした。これは約30年ぶりの新サイズで、具の量は「大盛」の2倍。価格も722円(税抜き)と「並盛」の2倍以上する。
それでも、腹一杯食べたいという若年層を中心に支持を集め、新規顧客の取り込みに成功した。
加えて、19年5月にはプライベートジムのライザップとコラボした「ライザップ牛サラダ」を投入。7月には「牛皿麦とろ御膳」と、消費者を飽きさせないために約2カ月ごとに大型の新商品を投入した。
こうした施策が功を奏し、20年1月までの11カ月連続で、既存店売上高が前年を上回った。こうして吉野家事業だけで、前期に比べて約24億円もの増益に成功したのだ。