不満や苦情を時間をかけて聞いていき、一個一個解決していきます。

 細かい社内のルール、働き方の決まり、人間関係を本当に細かく見ていって、従業員にとって働きやすい環境を整えるのです。

 困っている人を決して見捨てず、最後までフォローしていきました。

 普通、そんなことはしません。

 苦情や批判が出るというのは自分のやり方を否定されているようなものですから、誰だって耳をふさぎたくなるはずです。

 しかし、そうではなく徹底して聞き、徹底して解決しようとする。

 自分の業務もたくさん抱えているはずなのに、大きな時間を割いて社内の問題を解決していったのです。そばで見ていて、これには本当に驚きました。

 そんな支配人に、私は一度だけ怒られたことがあります。

 多摩センター三越がオープンしたばかりの時、人員不足でお店には入口のドアを開ける警備員さんもいませんでした。

 ところが、販促部の責任者だという意識の強かった私は「ドアを開けるのは総務部の仕事だろう」と考えていました。

 一方の総務部は総務部で自分たちの仕事をしていたため、開店時間にドアが開かないという事件が起きてしまったのです。

 支配人がやってきて、初めて激怒しました。

「販促とか総務とか関係ないだろ、一番大事なのはお客様だろ!」

 なんて小さなことにこだわっていたのかとハッとさせられました。

 小さなエゴは、大事なものを見失わせます。そんなエゴは手放しましょう。志と聞く耳、両方持っているからこそ、人に認められ、慕われ、結果を出せるのです。