一人の先生は
何人まで教えられるか?

 義務教育の根幹は「読み・書き・そろばん」ですから、現場の先生が一所懸命に教えたら、板書でもある程度高成績をキープできると思うのです。

 ただ、高等教育の根幹は、一人ひとりの才能を伸ばすことです。

 一人ひとりの才能を伸ばそうと思ったら、一人の先生が何人の生徒を指導できると思いますか?

 多くて10人が限界だと思います。

 これは教育だけの話ではありません。
 一人の先生や上司が生徒や部下を指導できるのはせいぜい10人。
 これは歴史を見ると、遊牧民は「十進法」で社会を構成してきたのです。

 軍隊では、10人隊長、100人隊長、1000人隊長。
 どの職階でも10人の部下しか見ない。
 モンゴル軍が強かったのは、優秀な10人隊長は瞬時に10人の100人隊長をコントロールできるので1000人隊長が勤まるからです。

 一人の先生が5~10人の生徒を懇切丁寧に指導しようとしたら、高等教育にはかなりお金がかかりますよね。

 欧米の有名大学の授業料が高いのは、一人の先生が心を込めて少人数で教えようとしたら、先生をたくさん雇わないといい教育はできないからです。
 教員一人当たり学生数(ST比)が少ない大学ほど学費は高くならざるをえない。

 欧米の大学のほとんどが私立ですから、授業料だけでやっていこうとしたら学費は高くなる。
 一方で、国民負担を大きくして給付を大きくする(教育費を無料にする)北欧型の解決策もありますが、高等教育にはお金がかかるのは、いい教育をしようと思ったら、少人数で教える以外に方法がないからです。

「企業は学生のどんな成績を見るべきか」
については次回にしましょう。

 過去の僕の『哲学と宗教全史』全連載は「連載バックナンバー」にありますので、ぜひご覧いただき、楽しんでいただけたらと思います。