飲食業なら例えば、店内のIoT化により来店客同士が密接にならないように席の配置を自動で行うようなシステムなど、安全な飲食体験を提供するサービスがビジネスになる可能性もあります。withコロナ時代には、これまでにリアルで価値を感じていた体験をリビルドすることになるでしょう。

 いずれ新型コロナ感染拡大は終息して元に戻ると考えている人は、今回のコロナ禍を「アノマリー」、つまり異常事態だと捉えているのではないかと思われます。しかし、私はこれをアノマリーではなく「チェンジ」だと考えています。

 振り返ると、日本ではバブル崩壊をアノマリーと捉えた人も多かったのですが、実際にはバブル景気の終わりとともに昭和40年代から続いてきた安定成長期は終焉し、元に戻ることはありませんでした。今回の変化はこれと同じで、一時的なものではなく、恒常的なものと考えた方がいいと私は感じています。しかもコロナ禍を背景に、行き過ぎたグローバル化や対立も露呈してきているようにみえます。

 身近なビジネス面では、リアル店舗を持つ飲食店でケータリングやデリバリーを始めたところが多く見られます。こうした店では製造手段を考え、何とか危機をしのごうとする中で、新しい形態での商売の体制を整えてきています。新たに整った体制は、自粛モードが縮小した今後のビジネスでも上積み分として残ることでしょう。ちょうどBSEが発生したとき、入手が困難になった牛の代わりに豚丼を提供するようになった牛丼チェーンが、事態の収束後もメニューに豚丼を残して展開するようになったのと同じと考えれば分かりやすいかもしれません。

 飲食業だけでなく、ほかの業界でも生き残りをかけてコアコンピタンスを継続するための努力は、恐らく後に上積み分として残るはずです。大企業などでは、コロナ禍を一時的なものとして危機対応しているところも多く見られますが、問題が長引いたときに恒常的な現象と捉えて対応していくことで、今後のプラスにもなることでしょう。

withコロナ時代の仮想世界に
求められるサービスとは

 コロナとの共存時代に入ると、オンラインでさまざまなことを完結させようという動きは、ますます進むはずです。また私たちは、オフラインでの楽しみをある程度、諦めなければいけない可能性があります。かつてロックミュージックのPVで見て憧れた、大勢の若者がプールサイドに集まってはしゃぐような日々は、もう戻らないかもしれません。

「あの頃に戻したい」という思いの一方で、我々はこの状況下でも新しいワクワクをつくらなければ、ということも感じています。例えば、Zoomなどオンライン会議ツールを使った飲み会が結構楽しいということは、今回、新たな発見でした。ほかにも壁紙を工夫してみたり、Snapchatの機能を使って顔を犬猫風に加工して楽しんでみたり、いろいろなアイデアが取り入れられています。