また人の働き方も変わってきています。リモートワークはコロナ後も残るでしょう。これもどのくらいの割合になるかは分かりませんが、仮に丸の内勤務の会社員の30%がリモートワークを行うようになり、オフィスには週1度程度しか出社しなくなるとします。それだけで、オフィス周辺のビジネスは大きく変わります。ランチ営業で収益をあげていた飲食店への影響も大きいでしょう。

 ドイツでは、美容院の営業が再開しましたが、顧客と顧客の間を1.5メートル保つことや、髪を洗うときに手袋を着用すること、美容師と顧客との会話は鏡越しで行うことなど、細かい規則が定められました。客の入れ替え時に消毒を行うなどの対策を実施するため、以前の30%ほどしか接客ができないというサロンもあるといいます。

 航空会社は現在も厳しい状況にありますが、運航が再開しても苦難は続きます。デルタ航空では感染症対策のために、乗客が座れる機内の席を一部ブロックし、着席禁止にしました。ユナイテッド航空やアメリカン航空でも同様の措置が取られています。

 これらの対応は、感染症対策を考えれば今までと同じ数の顧客をサポートできないことを示しています。今のところ、需要の減少もあって利用価格を引き上げることはできませんが、状況がある程度落ち着いた暁には淘汰される企業・店も出てきて、残った企業や店舗は収益を確保するために料金を上げざるを得なくなるでしょう。

「安全・安心」が貴重な価値として
扱われるようになる

 アフターコロナ時代は来ない、といっても、今のような自粛モードが続くことはなく、基本的には経済活動は再開することになるでしょう。ただし、その際にはスマートフォンの位置情報などを使って感染症対策を行うなど、コロナ以前の自由な活動と、完全な制限・自粛との間を取った中間の調整が行われるようになると考えられます。

 このようにして経済が回るようになると、「安全・安心」という価値が一番貴重なものとなり、それに対してお金を払う人が出てくるようになるでしょう。

 旅行、特に海外旅行は大航海時代と同じように高いリスクを伴うものとなりますが、一方で、それに対しての安全を売りにする航空会社や旅館が出てきてもおかしくないと思います。座席数を減らす代わりに、乗員乗客ともに感染症リスクが少ない人を厳選し、機内での対策も完璧に行う。ただし料金は高い、といった具合です。

 美容院の場合は、旅行業界とはだいぶ異なるでしょうが、同時来店者数を減少せざるを得なくなるとしたら、質を下げてでも料金を維持するか、質を上げて料金を高くするかしか方法はありません。今までの美容院での施術はぜいたく品になるかもしれません。