引きこもる人々が
10万円給付金を受け取りづらい事情
引きこもり状態にあることを理由に、「新型コロナウイルスによる救済策の目玉ともいえる10万円の特別定額給付金、いわば“コロナ給付金”を受け取れないのではないか?」といった危惧が、当事者たちの間で懸念されている。
そんな事態に、引きこもり経験者で『不登校・ひきこもりが終わるとき』の著者でもある丸山康彦さんは、ブログやメルマガなどで、「特別定額給付金の取り扱いに関する緊急談話」を発表した。
きっかけは、現在「不登校・ひきこもり相談」業務をしている丸山さんが、「引きこもり状態であることを理由に、世帯主の親から10万円給付金を配分してもらえないことが、自分の知らない間に決まっていた」という本人の話を、ラジオで聞いたことだ。
実際、筆者が聞いた事例の中にも、親との折り合いが悪く、住民票を置いたまま実家を追い出された人から、「今さら親に頭を下げて給付金を振り込んでほしいとお願いできない」という相談も最近あった。その相談者には、役所にすぐ連絡して世帯分離の手続きをするように勧めたものの、DVなどで住所を実家に知られたくない人たちもいるし、住まいを見つけられずにいる人にとっては、そもそも住民票を移すことができない。
言うまでもなく、この10万円給付金の趣旨は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、国の緊急事態宣言を受けて自粛を強いられる生活を頑張った国民1人1人への、一律の救済策である。その趣旨はよかったのに、制度を決めるのが遅くなったこともあって、1人1人に給付するのではなく、世帯主に一括して家族分を振り込むことになった。
そのため、特に年配の世帯主の中には、それぞれの家族の給付金分も「これは家庭に振り込まれたものなんだから、うちでは冷蔵庫を買うからね」などと何の疑いもなく事後承諾を求める人もいる。
普段から家族の相談に乗っている丸山さんによれば、「うちの子は、どうしたら社会に戻れるのか?」といった社会復帰のことばかり考える親が多く、本人にとってはそのように見られていることが、とてもつらいという。
「自分が、家族の一員として見られているのか。それとも、家族の中で排除されているのか。そういう気持ちを多かれ少なかれ持っているのではないかと思います」