ある調査会社に寄せられた
極秘のレポート依頼

 ファーウェイは通信基地局やスマホのような通信機器を手掛けており、その研究開発投資は年間2兆円近くに達している。この研究意欲旺盛なファーウェイがソニー、特に半導体技術に対しては、以前から「並々ならぬ関心」を寄せ続けてきた。

 ファーウェイはソニーをイメージセンサーなどの供給企業としてだけでなく、ハイレベルな開発パートナーと位置付けている。これだけでも十分に深い関係だが、それに飽き足らない「並々ならぬ関心」を物語る秘話を、東京に拠点を置くある調査会社の幹部が匿名を条件に語った。

 時は1年半近く前にさかのぼる。18年末から19年初にこの調査会社はファーウェイの中国本社から、ソニーに関するある調査レポートを依頼された。大まかに言えば、ソニーの半導体事業の技術優位性やイノベーション力に関する詳細な調査といった内容だ。ソニーはなぜ優れているのか、その秘訣の全てを学びたいとの意向が、ファーウェイ側から伝えられた。

 ファーウェイに限らずエレクトロニクス業界では、競争相手や取引相手の技術力について、調査会社にレポートを依頼することは珍しくない。だがファーウェイの依頼内容の詳細は、ほかの企業のものとはかなり異なっていたという。

 というのも、具体的に調査してほしい項目として、以下のような事柄が盛り込まれていたのだ。「半導体事業のキーパーソンとなる技術者は誰か」「その技術者の連絡先は」「自宅の住所は」……。「通常の企業からの依頼は、SWOT分析のようなフレームワークに基づくもの。相手企業の個人情報を求めるような依頼は受けたことがない」(調査会社幹部)。

 調査の対価は数千万円と、この調査会社が通常請け負っている価格に比べて1桁大きい金額が提示された。だが結局この調査会社は、依頼を断った。ヘッドハンティングが行われる可能性があったし、それに至らずとも、何らかの形でソニーのキーパーソンにファーウェイが接触することが想定され、ソニーにとっては重要な人材の流出につながるか、「少なくとも半導体事業を学び取ろうとする意図が透けて見えた」(同)からだ。

 調査会社が依頼を断った数カ月後の19年5月、ファーウェイは米国の輸出管理規則に基づくエンティティリストで指定され、事実上の禁輸制裁を受けた。この制裁ではソニーのイメージセンサーは対象外で、これ以降もファーウェイはソニーから半導体の調達を続け、両社が互いに重要な取引相手であることは変わらない。ただ前述の秘話で露呈したような「並々ならぬ関心」は今後、抑えざるを得ない。そこにはソニーとマイクロソフトの協業が関係している。