1年分の食料を準備し、途中、一度の調達もできず1日3食を作り続ける…そんなハードな生活を経験したことがある人はそうはいないはず。今回インタビューをさせていただいたのは、『南極ではたらく かあちゃん、調理隊員になる』(平凡社)の著者であり、このハードな生活を仕事としてこなしてきた元南極地域観測隊調理隊員の調理師・渡貫淳子さんです。
“非常時”の料理に必要なのは
栄養摂取だけでなく、心を満たす工夫
「日持ちがしない野菜は貴重で、南極にいる間の1年間で口にしたプチトマトは1つ、レタスは1カ月で5枚ほどでした」
かんだときのはじける食感、咀嚼によって感じられるおいしさ…南極での一番のごちそうは千切りキャベツと卵かけごはんだったという渡貫さんは、野菜で一番大切なのは、栄養よりもテクスチャーだと話します。隊員たちが帰国途中に立ち寄ったオーストラリアで真っ先に向かったのはステーキハウス。それも、目当てはステーキではなくて、サイドメニューのサラダビュッフェだったというのだから、その感覚は渡貫さんだけのものだったわけではなさそうです。
“非日常”そのものの仕事に料理人として携わった渡貫さんに、今の時代を心身ともに健やかに乗り切る食生活の知恵を教えていただきました。
「南極でもそうでしたが、こういうときには、おなかを満たす料理ではなくて、心を満たす料理であることを意識すると良いですよね」