リカちゃん――その麗しい響きに胸が高鳴るのは、今も昔も変わりはないようだ。あのリカちゃん人形を販売しているタカラトミーでは、今年7月、「リカちゃん なでしこジャパンモデル」を発売。先のロンドン五輪で悲願のメダルを獲得し、大きな感動を巻き起こしたなでしこジャパンだが、キュートなリカちゃんモデルとなってお目見えしている。
なんと、JIFA(公益財団法人 日本サッカー協会)公認という本格派。背番号はサポーターをイメージした12番を採用しているほか、左胸には日本国旗やサッカー日本代表チームのエンブレムなどを付けた精巧なつくりだ。6000体限定で、価格は3780円(税込)。
この他にも7月後半には、リカちゃんがいなせな回転寿司の職人に扮した「くるくるまわるおすしやさん」を発売(税込5040円、人形は別売)。8月に入ると、「マーメイド リカちゃん」(税込3675円)や「ファンタジーリカちゃん まほうのほうせきばこ」(税込3129円)、「ファンタジーリカちゃん おひめさまドレスセット」(税込3129円)など、新商品の目白押しとなった。
さて、このリカちゃん、筆者のようなアラフォー世代には特別な思い入れがある。初代リカちゃんが誕生したのは1967年。筆者が生まれる前年である。そして87年に生まれた4代目が今に続く。
リカちゃんの本名は、香山リカ。5月3日生まれの永遠の小学5年生だ。【身長142cm。好きな色は白とピンク。おかし作りが大好きなの。パパ・ピエールは音楽家、ママ・織江はファッションデザイナー】(タカラトミー リカちゃん公式サイトより)というプロフィールにも、多くの少女たちが胸を躍らせる。
実はリカちゃん遊びは、情操教育にも効果てきめんのようだ。同サイトには以下のような記載がある。
「女の子にとってリカちゃんは、うれしい、楽しいといった自分の気持ちを、自然に、そして自由に表現できる存在。リカちゃん遊びを通して創造力を膨らませ、家族やお友達とのコミュニケーションの中で社会性や生活習慣について学んでいきます。また、身だしなみを整える習慣を身につけ、女の子らしい美的センスをはぐくみます」
「美的センス」はさておき、リカちゃんごっこを通して、実際に社会性や生活習慣、そして何より役割分担(ジェンダーを含めて)を学べたように感じるのは、筆者だけではないだろう。
2011年の人口動態統計(厚生労働省調べ)によると、第1子出産時の母親の平均年齢は30.1歳。娘がリカちゃん適齢期の10歳前後になるのは、母親が40歳前後という計算になり、リカちゃん育ちの母親が娘に新たなリカちゃんを買い与える構図ができ上がる。
良き玩具文化、そして人形文化は、母から娘に継承され、そしてその営みは今後も連綿と続いていくことだろう。そして、件の「なでしこジャパンモデル」をはじめ、昨年末には、着せ替えを楽しめるソーシャルゲーム「コーデアイドル★リカちゃん」がGREEで配信されるなど、新しい息吹も次々に取り込まれている。
長く愛されてきたブランドは守りつつも、攻めの姿勢で新たな魅力を醸成していくタカラトミーのしたたかな戦略には、オールドファンである筆者も脱帽するばかりだ。
(田島 薫/5時から作家塾(R))