平井陽一朗(BCGデジタルベンチャーズ パートナー&ジャパンヘッド)平井陽一朗(BCGデジタルベンチャーズ マネージング・ディレクター&パートナー ジャパンヘッド)

前回記事では、新型コロナウイルスの影響が続く状況下で、企業のデジタル・トランスフォーメーション(DX)が劇的なスピードで推進されつつある現状を紹介した。また、企業変革を一気にやり切れるかがコロナ後に生き残るためのカギであるという前提に立ち、企業変革を阻害する5つの要因のうち、トップ・リーダー層の頻繁な人事異動や縦割り組織について述べた。今回は2つ目の要素である、トップ・リーダー層のデジタルリテラシーの大切さについて考えたい。

日本の経営層のデジタルリテラシーは
危機的に低いと感じている

 私が日々、日本の大企業のトップ・リーダー層とご一緒するなかで、彼らのデジタルリテラシーが諸外国と比べて低いと感じる場面がある。たとえば、経営層自身が日常生活で新しいアプリやデジタルサービスを使っていない、Slack等のコミュニケーションツールを活用していない、仕事のメールの返信が遅い、時には返信すらせずに放置するといった行動に驚かされることがある。加えて、大企業とともに新規事業に取り組むなかでは、いわゆる「ITシステム」に手を入れようとしたとき、経営層の多くが自社のITシステムの現状を把握しておらず、情報システム部門や外部の開発ベンダーに任せきりにしている状況に必ずといってよいほど直面する。私は、このような経営層のデジタルリテラシーの低さが日本企業の大きな課題の一つだと考えている。新規事業とITシステムは切り離せない関係にあることが多く、さらに言えば、既存事業や経営全体においてもITシステムは重要な役割を果たしているからだ。