トップ・リーダー層は、戦略・企画・マーケティングといった馴染みの深い領域であれば自前でやろうとするが、ITやデジタルが絡むと途端にCTO(最高技術責任者)やCDO(最高デジタル責任者)、情報システム部に任せてしまいがちだ。トップ層の中には、IT・デジタル部門をリードした経験がなく、とっつきにくさを感じる方も多いことと思う。しかしながら、「よく分からないから丸投げしよう」という姿勢でCTOや情報システム部に判断をゆだねているのであれば、適切な役割分担ではなく「逃げ腰」だと言えるだろう。さらに言えば、自社のITセキュリティをリスクにさらし、自社の成長を大きく阻害している可能性すらあることを自覚すべきだろう。

 すべてを一朝一夕では変えられないが、少なくとも組織を引っ張るトップ・リーダー層のデジタルリテラシーを底上げしなければ、状況は永遠に変わらず、日本企業はグローバルのなかで取り残されてしまうのではないかと危惧している。本人のバックグラウンドや専門性がどうであれ、変革の「肝」に関わる領域であれば最低限のリテラシーを持つべきだろう。

 MIT CISR(マサチューセッツ工科大学情報システム研究センター)の研究によると、デジタルリテラシーが高い取締役が3人以上いる大企業は、2人以下の企業と比べて利益が17%高く、売上成長率が38%、ROAが34%、マーケットキャップ成長率も34%高いとのことだ。そもそも成長率が高いIT・デジタル業界にデジタルリテラシーの高い取締役が集まりやすいという偏りは想定されるものの、業種間の垣根が薄れつつある昨今、すべての大企業は業種を問わずGAFAをはじめとするIT・デジタル企業を「協業相手かつ競争相手」とみなし、対等にわたりあう必要がある。そのためにも、トップ層が最低限のデジタルリテラシーを身につけることは、現代の経営に必須の要素の1つと言えるだろう。

デジタルリテラシーを高める
5つの処方箋

「経営者もプログラミングを学ぶべきか」と聞かれることがあるが、よくある勘違いだ。多くのデジタルスタートアップの創業者はエンジニア出身ではなくコードも書けない(私自身も書けない)。スキルとしてコードが書けることと、デジタルリテラシーを身につけることはまったくの別物だ。私は、エンジニアのバックグラウンドを持たないトップ・リーダー層であってもデジタルリテラシーを高めることは十分可能だし、また必須だと考えている。そのための方法論として、以下の処方箋を挙げたい。

 処方箋は「初級編」と「上級編」に分けており、今回は初級編を詳しく解説する。初級編は誰でもすぐに着手することができるため、本稿をお読みのあなたにもただちに実行いただければと思う。

■デジタルリテラシーを高める5つの処方箋

・初級編1: 自分でさまざまなデジタルサービス・プロダクトを使いまくる
・初級編2: デジタルを駆使し、社内外とのコミュニケーションを質・量ともに高める
・初級編3: 社内外のデジタルリテラシーが高い人材(タレント)との接点を持つ

・上級編1: 情報セキュリティへの感度を高める
・上級編2: 自社のITシステムをより深く理解する