(2)日本版ホワイトカラーエグゼンプションなど、労働時間の考え方の見直し

 労働時間の規定を除外して、労働賃金を仕事の成果のみで評価する「日本版ホワイトカラーエグゼンプション」は、給与の高い人たちの残業代の抑制だ、長時間労働の温床だと揶揄(やゆ)されてきました。ところが、テレワークをきっかけに、自律的に働ける人たちは「これもありではないか」と思い始めています。テレワークによって通勤時間が減少した人、出社とテレワークをうまく組み合わせることで、メリハリをつけて成果を上げやすくなった実感を持った人が少なからずいるのです。これまで法対応の文脈で検討されてきた働き方ですが、テレワークとの関連の中で、今後検討していくべきテーマになるでしょう。

(3)副業(複業)解禁

 テレワークにより、仕事面や学びという面でもオンラインとバーチャルの世界が急速に進行したことで、社内外の境界線を越えて、いろいろな人とコラボレーションできる世界になっています。仕事のできる人ほど社外の人とつながることから生まれる可能性を感じ、「このまま会社の中だけにとどまっているのはもったいない」と思い始めています。今後、会社が彼らをつなぎとめるのはより難しくなるはずです。

 そうしたなかで、優秀な人材が自社にとどまったまま、いろいろな人とつながって価値を発揮し、会社に還元してもらうためにはどうすべきか。その一つの方法として、「副業」を認める懐の深さは必要になるでしょう。

(4)理念、ビジョンへの共感

(1)(2)(3)のテーマは、会社と社員の関係性を「求心力」と「遠心力」で表すとすると、「成果さえ出してくれればいい」という遠心力の話になります。しかし、これが行き過ぎれば、何のための組織なのか、組織に所属する意味は、と疑問を持つ社員も増えるはずです。

 テレワークが可能とした個別化や個々人にとって望ましい働き方の世界は、きちんと手綱を引いておかなければ、バラバラになってしまいます。そこで、私たちはなぜ集うのか、何のための仲間なのかという「求心力」が必要になるのです。

 一番大事なのは、何をやるために、どんな未来を実現するために集うのかという大目的でつながること。つまり、改めて理念やビジョンを明確にする必要があります。

 では、(1)~(4)のテーマについて、どのような優先順位で取り組むべきでしょうか。一般論では、より上位の概念にある「(4)理念、ビジョンへの共感」から検討を始めるのが王道ですが、これは経営の根幹に関わるためとても大変です。ですから、直近で問題になっているか、社員の関心が高いテーマから扱うのがいいでしょう。

 関心の高さで言えば、(1)評価制度が挙げられますが、評価の不公平感は積年の課題です。この機会に取り組むという考えもありますが、骨が折れる問題なのは間違いありません。そこで、まずは反対が少ないテーマである「副業」から取り組むのもよいかもしれません。

 さて今回は、以前から人事部門の中で課題に挙がっていたテーマ、いわば「積年の課題」を取り上げました。テレワークがもたらした「これからの課題」は別の回でご紹介します。