気象災害には歴然とした
「地域差」があるという現実

 次に、これもあまり知られていない2番目のタブーがあります。実は、温暖化による気象災害には地域差があるのです。はっきり言えば、日本の西半分が危ないことが温暖化の研究者によって予測されており、現実に死者の多い豪雨災害は中部地方以西に圧倒的に多いのです。

 本当は、日本の西半分よりももっと豪雨災害が増えるのがお隣の中国の南半分で、そのため三峡ダムが危ないのではないかという別の予言がありますが、この話は本稿では割愛します。

 とにかく、温暖化で海面温度が上昇することにより、前線が従来よりも南に抑え込まれて、結果として豪雨災害は西で起きやすくなります。ここまでが科学的事実なのですが、そんな話が広まると自治体から不動産業界まで、西日本の関係者はいい気持ちがしないものです。

 地元のメディアが「この場所は危険が高いことを認識したほうがいいですよ」とは言えない事情があるのは、当然でしょう。そうした事情もあり、気象災害の地域差については語ることがタブー視されているのです。

 そして、3つめのタブーがダムです。豪雨災害がこれからの10年間で激増することははっきり予測されているのだから、本来であれば集中豪雨の気象予想が出た段階で、ダムの水は早めに下流に放流しておくべきです。

 しかし、ダムは渇水対策優先で建設された経緯があるため、豪雨が予想されるからといって、簡単に水がめを空にすることはできません。その上、豪雨は特定の場所に集中するので、7月8日のように岐阜・長野が集中豪雨の対象になると予測されていても、どのダムから事前に水を放流すべきかを判断することは難しいのです。

 だからといって、すべてのダムから事前に放流することはもっと現実的ではありません。そういう状況だと、たとえ先回りした放流で、飛騨川水系のダムが豪雨を上流で食い止められたとしても、他の水系ではダムの水がめが枯渇してしまう事態が起きるかもしれないわけです。