世界中が「ステイホーム」を余儀なくされる中、市場が伸びた数少ない産業であるゲーム。任天堂の「あつまれ どうぶつの森」のヒットなどが喧伝され、業界全体が“特需”を謳歌している中、水面下では続々と「ゲーム業界の新勢力」が勃興する。特集『コロナで崩壊寸前!どうなる!?エンタメ』(全17回)の#3では、需要が爆発するゲーム業界と、その裏で繰り広げられる新旧入り乱れた仁義なき戦いの行方を追った。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
あつ森旋風、世界を席巻!
非ゲームユーザーを巻き込み歴代記録更新
飯田里美さん(42歳・仮名)は、今日も任天堂スイッチの電源を入れ、「あつまれ どうぶつの森(以下あつ森)」を起動した。向かうのは次女、まどかさん(10歳・仮名)が“管理”する「かりん島」。島全体を見回り、雑草を抜き、鉱石を採掘するのが里美さんの日課だ。島には花が咲き乱れ、公園や遊園地、喫茶店、日本庭園などがある。デザインを考えてこれらを整備したのはまどかさんだ。飯田さん一家は、家族4人であつ森にユーザー登録して、かりん島に自分の家を持ち、それぞれ島の整備に必要な素材やアイテムを調達して、まどかさんの家の外に置く。一緒に遊ぶことも多く、6月に行われたゲーム内の結婚式イベントには4人で“参列”した。
以前は、家族の誰もゲームをしなかった飯田家。だが緊急事態宣言中の4月末、まどかさんにおねだりされてスイッチ本体と共にあつ森を買った。その結果「家族全員がはまった。それに、あつ森で遊ぶうちにまどかの創造力がかなり鍛えられたと思う」と里美さんはにっこりする。
里美さんのような家庭は、このコロナ禍で国内のみならず全世界で爆発的に増えた。対戦ゲームやスポーツ物が圧倒的に多い欧米のゲーム市場において、明確な目的がないあつ森のようなゲームにここまで注目が集まるのは前代未聞だ。コロナ禍の厳しい現実とは正反対の、牧歌的な無人島生活に癒やしを求めて世界中の人が殺到した。
どうぶつの森シリーズは2001年からあるが、全世界でここまで売れたのは初めてだ。発売した3月の1カ月間に世界で500万本が売れ(米調査会社ニールセングループのスーパーデータ調べ)、ソフト月間販売本数の世界記録を更新。発売後6週間での販売数は1341万本(任天堂発表)に達した。あつ森のリリース予定は以前から決まっていたもので、この成功は偶然時期が重なったものとはいえ、任天堂がコロナ禍に伴う最も大きな特需を手にしたことは間違いないだろう。
あつ森だけではない。ゲーム産業はコロナ禍でおしなべてプラスの影響を受けた数少ない産業だ。そして、市場全体の成長に伴い、日本のゲームメーカーの地位を脅かす新勢力が続々と勃興している。