オリンパス事件の教訓
「投資ファンド=悪」か
昨年秋、英国人社長が解任され、その元社長が海外の当局やマスコミに訴えたことで一気に事件化したオリンパスの旧経営陣による「飛ばし」問題。
この問題の本質的な部分は、それまでも一部雑誌等でかなり正確に報道されていたが、実際に「飛ばし」の詳細が明らかになったのは、同社が設置した第三者委員会の調査報告書が出てからである。この報告書によって、「飛ばし」の背後に、それを可能にする仕組みとして、投資ファンドが多数使用されていたことが改めて浮き彫りにされた。思い起こせば、これ以外にも、ライブドア事件や今年発覚したAIJ事件でも、投資ファンドが使われていた。
しかし、これらをもって「投資ファンド=悪」と決め付けるのは拙速すぎよう。本稿では、オリンパス問題を手掛かりに、投資ファンドを使った不正がどうして可能だったのかを検証すると共に、今後、投資家が気をつけるべき点を洗い出してみたい。
ファンドを使った
「飛ばし」の構図
オリンパスが用いた「飛ばし」の手法は、調査報告書の中で「損失分離スキーム」という名前で描写されている。それは、「オリンパスの連結対象とならないファンドに含み損のある金融商品を簿価で買い取らせて含み損を表面化させない方法」(調査報告書より)である。
その詳細は余りに煩雑なので、調査報告書に譲るが、記載があるだけで少なくとも6つの国内籍・海外籍のファンドと、複数のSPC(特別目的会社)が複雑に絡み合っていることがわかる。その「飛ばし」は、本質だけを要約すれば、以下のようなものである。