トヨタ一強#4Photo:Grazyna Myslinska/EyeEm /gettyimages, JIJI

豊田章男・トヨタ自動車社長は執行役員を削減し、グループ従業員36万人を最高幹部わずか9人で統べる「超」中央集権体制を敷いた。一方、人材が枯渇しているグループ会社に幹部を送り込む「落下傘人事」でグループの統率を図る。特集『トヨタ「一強」の葛藤』(全5回)の#4では、トヨタの幹部人事が抱えるリスクに迫る。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

執行役員55人から9人に削減で
章男社長の「超」中央集権体制へ

 トヨタ自動車は組織構成を頻繁に見直してきた会社だが、特に豊田章男氏が社長に就任した2009年以降の役員構成の激変ぶりは前例のないものだ。

 11年に取締役を27人から11人に半減。現在の取締役は9人なので、章男氏の社長時代、実に3分の1に減ったことになる。執行役員の削減はさらに大胆だ。19年の役員体制の見直しで55人を23人に減らし、今年は9人にまで絞り込んだ。

 売上高30兆円のトヨタの取締役が9人というのがいかに少ないかは、売上高が約10分の1の東芝の取締役が12人であることからも明らかだ。

 こうしたドラスチックな役員体制の改変の過程で、章男氏は「全権を掌握」(トヨタの有力サプライヤー幹部)し、「超」中央集権体制を築いた。

 あるトヨタ幹部は「(現在の執行役員9人は)全員が章男さんとは気心の知れた間柄の人だ。そういう人だけにするのに11年かかった」と周囲に漏らしている。

 詳細は後述するが、パフォーマンスが不十分な幹部は事実上の降格やグループ会社への出向という憂き目に遭う一方、信任の厚い幹部は年齢にかかわらず重用された。

 粛清や抜擢を繰り返す章男氏の真意はどこにあるのか。