コロナ危機が医療界の地図を塗り替えた最たるものが、オンライン診療の全面解禁だ。既存業者は沸き立つが、巨大資本が今夏新規参入すると、競争激化は必至。また、全面解禁は時限的なものとして始まっており、反対勢力が巻き返しを図ろうとしている。特集『コロナが映す医療の闇』(全14回)の#08は、オンライン診療を巡るバトルの最前線を追う。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
ガッチガチの規制を吹き飛ばす
風が吹いた「4・10」
ヨンテン、イチゼロ――。
2020年4月10日はデジタルヘルス業界で、「節目の日」として語り継がれることになるだろう。
新型コロナウイルスの感染拡大を回避する措置の一環として、この日、「ガッチガチの規制」(業界関係者)と言われてきたオンライン診療の全面解禁について、厚生労働省が通知を出した。コロナが終息するまでの時限的措置で、初診からの全面利用にゴーサインが出たのである。厚労省や日本医師会は最後まで慎重な姿勢を崩さなかったが、官邸が押し切った。
オンライン診療とは、医療機関と患者の双方がスマートフォンやタブレットのビデオ通話機能などを使って、予約、診察、決済などをインターネット上で行う治療方法だ。そのオンライン診療のアプリケーションを提供する大手事業者の一つ、メドレーの豊田剛一郎共同代表(東京大学医学部卒業、元マッキンゼー・アンド・カンパニー)は急転直下の全面解禁に「大きく風が吹いた!」と胸を躍らせた。
豊田共同代表はZホールディングスの川邊健太郎社長などと共に発起人となり、「コロナの疑いがある患者に対するオンライン診療の初診解禁」のオンライン署名運動を3月末から展開していた。厚労相宛てに約5.5万人分の署名を提出しようとした矢先の全面解禁。しかも、求めていた条件より緩かったのである。
全面解禁を受け、SNSサービス大手であるLINEかいわいでも歓喜の声が上がった。LINEが51%出資するLINEヘルスケアが医療版プラットフォーマー構想の下、水面下でオンライン診療への参入準備を進めていたからだ。