医者の処方箋が必要な医薬品からドラッグストアなどで買える医薬品に切り替わることを、OTC医薬品(大衆薬)へのスイッチという。特集『コロナが映す医療の闇』(全14回)の最終回では、コロナで国民のセルフメディケーション意識が向上する中で過熱する、スイッチOTCを巡る攻防をレポートする。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
「医者にハイジャックされた」検討会議に
ついに大衆薬業界の堪忍袋の緒が切れた
「評価検討会議がスイッチの可否を検討するのは越権行為」
2月13日に開かれた内閣府規制改革推進会議「医療・介護ワーキング・グループ」(座長=大石佳能子・メディヴァ社長)の業界ヒアリングで、OTC医薬品(大衆薬)メーカーの業界団体である日本OTC医薬品協会(会長=佐藤誠一・佐藤製薬社長)がたんかを切った。この強いメッセージに医療界は騒然となった。
評価検討会議とは、正式名称「厚生労働省 医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」。政府が策定した「日本再興戦略」の2014年改訂版でうたわれた医療用医薬品から大衆薬への移行(スイッチOTC)の促進を担保するために、16年に新設された。スイッチを促進するべく、ベネフィットやリスクを公開の場で議論することが本来の役割だ。
検討会議のメンバーは16人で構成され、日本医師会常任理事を含む医者が10人、薬剤師3人、歯科医師1人、消費者1人、メディア1人となっている。事実上、「医者にハイジャックされている」(規制改革推進会議委員)この検討会議に対し、医療界ヒエラルキー(次ページ図参照)で下位の大衆薬業界が公然と反旗を翻した。
スイッチを促進するどころか、阻んでばかりの検討会議に対し、ついに堪忍袋の緒が切れたのである。