コロナ後の観光業、1組限定の「城泊」に期待がかかる理由三方を海に囲まれた高台に建つ平戸城。城内にいくつもある櫓の1つ、懐柔櫓が宿泊施設としてリニューアルされる

常設の「城泊」施設
長崎・平戸城にオープン

 コロナ禍で大きな打撃を受けている日本の観光業だが、これからを見据えた準備は着々と進められている。なかでも期待されるのが、全国各地にある「城」の活用だ。

 近年、農家の暮らしを体験する「農泊」や、写経や座禅を行う「寺泊」など、さまざまな体験型宿泊が人気を呼ぶなか、城に宿泊して城主体験ができる「城泊」イベントの試みも登場。2020年秋以降には長崎県・平戸城にて、日本初となる常設の「城泊」施設が開業する予定だ。

「城泊」とはどういうものか。どんな魅力があるのか。平戸城の「城泊」を探ってみたい。

 かつて南蛮貿易で栄えた長崎県平戸市の高台に立ち、「日本100名城(R)」にも選定されている平戸城。宿泊施設化のきっかけとなったのは、2017年に平戸市が民泊予約サイトの運営などを行う株式会社百戦錬磨と共同で実施した「平戸城キャッスルステイ無料宿泊イベント」だ。海外メディアでも紹介され、1組限定の募集に対し、国内外から約7500組の応募が殺到した。たった1泊のイベントだったが、平戸城の名を世界中に知らしめる効果があったといわれている。

 こうした手応えが元となって、城の耐震改修を機に城郭の一部である懐柔櫓を宿泊施設にリニューアルし、「城泊」の通年営業を行うというプロジェクトが生まれた。