社員が抵抗する
ネイティブではない社員が、英語を話す同僚に配慮せずに、母国語に戻ってしまうという話は珍しくない。その理由は多くの場合、母国語で会議を進めたほうが速くて簡単だからである。英語を話すことを避けるため、相手の不都合な時間に会議を開くなど、強引なやり方を取る人もいるかもしれない。
たとえばアジア人の社員が、イギリスでは深夜に相当する時間にグローバル・ミーティングを設定するかもしれない。そうすることによって、ネイティブではない社員は、自分が感じている不安や権限の喪失をネイティブ・スピーカーに押しつけるのである。
フレンチ社の多くの社員は、自分の語学力が人より劣ることがはっきりし、キャリアに関わる結果になると感じると、共通の会話に加わるのをやめたと語っている。「言い間違えるのが怖くて、話そうとしなくなるのです」と、同社の人事担当マネジャーは説明する。
これ以外のケースでは、グローバルテックのハンスが経験したように、英語で作成すべき資料が母国語で書かれたり、いっさい作成されなかったりする。「英語で書くのは難しすぎるから、私はやりません。そうすると、文書は何もないということになります」と、グローバルテックのある社員は語った。
業績に悪影響が出る
グループ活動に社員が参画しなくなると、損益に悪影響が出る。いったん社員の関与が低下すると、プロセスはばらばらになってしまう。会議で新しいアイデアが出てこなくなることもある。高くつく過失については社員が報告しなくなったり、間違いや疑問が持たれる決定について意見を述べなくなったりする。
グローバルテックのインド拠点で働くエンジニアの1人は、会議がドイツ語に戻ってしまうと、自分は貢献したくても力を発揮できないと説明した。後から議事録は手に入るとしても、重要な情報、特に会議中の雑談で出てきた情報が得られない。このような短い雑談には、重要な関連情報や背景の分析、特定の問題の根本原因に関する仮説が含まれていることが多かった。彼は会議に加わることができず、問題解決の話し合いから学ぶこともできなかったという。