中国の新型コロナウイルス対策の中で日本を含め欧米諸国と異なるのが、感染者情報を最大限公開し、社会に周知させる点だ。背景にあるのは個人情報保護の重要性に対する認識の違いだ。具体的にはどのような情報共有をしているのだろうか。最前線を追った。(ジャーナリスト 姫田小夏)
感染者情報の共有がカギ
遼寧省大連市で新型コロナウイルスの感染が拡大している。市は600万人を超える全市民を対象にしたPCR検査を始めた。7月26日の開始以来、同市は5299カ所に検査拠点を設け、累計2万4790人の医療従事者を動員し、31日には448万8000人のPCR検査が完了した。
中国では遼寧省以外にも、吉林省、黒竜江省、福建省、北京市、新疆ウイグル自治区で感染者の増加が見られ、7月31日の時点で、中国全土の累計感染者数は8万8122人、死亡者数は4668人となった。湖北省武漢市の封鎖が解除された4月8日に報道された感染者数は8万2697人(死亡3335人)。それから、およそ4カ月間で感染者数が5425人増加したとはいえ、必死にそのペースを抑え込んでいるという印象だ。
中国の徹底した封じ込め策は枚挙にいとまがないが、「感染者情報の提供」もその一つだ。中国では「感染者情報」を積極的に市民に共有させることで、感染を防ぐ手法を採っている。