クリニックが気づいた顧客とは

 ドラッカー塾(R)に参加した愛知県大府市の柊みみはなのどクリニックの内藤孝司先生は、耳鼻咽喉科、歯科、小児科、皮膚科のクリニックを開院している。このクリニックのミッションは、一般的な医療機関のそれとは大きく異なっている。

「柊みみはなのどクリニック」は、対象を子供に絞り込み、明るい雰囲気づくりを心がけることで、拡充を実現した。左上写真は、同クリニックを運営する医療法人る・ぷてぃ・らぱん 内藤孝司理事長(ブルーのジャケット)と、スタッフ。右上は、クリニックのオリジナルキャラクター

 一般的に医療機関は「すべての患者様に最高レベルの医療サービスを提供する」といったミッションが多いのではないか。一方、柊みみはなのどクリニックのミッションは、「子供たちの未来のために世界で一番ハッピーなクリニックを創る!」である。対象を子供に絞り込んで、内装を子供たちの目線で作り、クリニックのキャラクターもデザインして、従来の病院のイメージとは大きく異なる楽しそうな空間を用意した。

 当初、内藤先生は多くの医療機関と同様に、来院する人すべてを顧客と思っていたそうだが、ドラッカー理論を学び、二つ目の質問「われわれの顧客は誰か?」について考えたという。そして、よくよく調べてみると、他の耳鼻咽喉科に比して明らかに小児の数が多いことに気づいたそうだ。そこでクリニックの顧客を「小児とその家族」として定義した。

 そうして、従来行っていた高齢者向けの補聴器の相談をやめるなどし、小児へのサービスに集中することで人材と財務に余裕ができ、小児科への拡大を実現した。保険診療が中心のクリニックが複数の分院を持つことは難しいと言われるが、いまでは5つのクリニックを持つ医療グループとなった。顧客を明確にすることで、「選んだ顧客から選ばれること」を実現したのだ。

 ドラッカーは、顧客は変わっていくものだと言っている。顧客の変化に応じて自ら変化していくためにも、顧客については繰り返し考える必要がある。

●P.F.ドラッカーとは
1909年11月19日、オーストリアのウィーンに生まれる。経営学の第一人者であり、社会思想家、 「マネジメントの父」とも呼ばれる。「企業戦略」「コアコンピタンス」「エンパワーメント」「ABC会計」「民営化」「知識労働者」「目標による管理」をはじめとして、 現代のマネジメント思想において、教授が創り出した概念や用語は数知れない。
「ポストモダン」や「断絶」、「ナレッジ(知識)」といった目まぐるしく変化する現代を照らし出す原理も、 ドラッカー教授が最初に示した。米国クレアモント大学院で社会科学とマネジメント理論を教えるかたわら、 経営コンサルタントとして、コカ・コーラ、GE、P&Gなどの大企業のほか、美術館や慈善団体、協会、病院、 中堅・中小企業、大学、政府、大リーグ球団などの経営陣が抱える諸問題に50年以上も取り組んできた。日本でもソニー・盛田昭夫氏、イトーヨーカ堂・伊藤雅俊氏、オムロン・立石一真氏、ユニクロ・柳井正氏など多数の経営者がドラッカーマネジメントを信奉している。
著書は、『現代の経営』『経営者の条件』『断絶の時代』『企業とは何か』『マネジメント』『ポスト資本主義社会」 『明日を支配するもの』『ネクスト・ソサイティ』など多数。2005年11月11日、96歳の誕生日を目前にして永眠。

●ドラッカー塾(R)とは
P.F.ドラッカーから公式な許諾を受けてダイヤモンド社が主催する経営者研修。2003年より開始し、現在の累計修了者数は1800名を超える。P.F.ドラッカー明らかにしたマネジメントの基本と原則を体系的に学ぶプログラムで、一年間のトップマネジメントコースなど3つのコースがある。講師は国永秀男氏(株式会社ポートエム代表取締役)。http://www.dcbs.jp/

講師:国永秀男(くになが・ひでお)
株式会社ポートエム代表、ドラッカー塾(R)ファシリテーター。1962年生まれ。20代前半からドラッカー経営学に関心を持ち続ける。経営コンサルタントとしての経験を踏まえ、99年にドラッカーマネジメントを体系的に学ぶ場を提供するため、ポートエムを設立する。2000年から05年にかけてドラッカー教授を年に1回から2回訪ね、マネジメント教育とコンサルティングについて直接のアドバイスを受け、マネジメントを体系的に学ぶドラッカー塾(R)を推進している。