列島明暗 都市・地方財界・名門企業#6
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消えたのは、鉄道の利用客だけではなかった。系列のホテルや商業施設は軒並み休業し、旅行会社も売り上げ消失状態。関西私鉄各社の多角化への努力があだとなり、業績はまさに総崩れとなった。特集『列島明暗 都市・地方財界・名門企業』(全15回)の#6では、「私鉄王国」と呼ばれた関西の私鉄大手とJR西日本の苦境をビジネスモデルの特徴から分析する。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

私鉄・在来線の利用は回復傾向でも
新幹線の回復が遅れ苦しいJR西日本

 テレビ番組で放映される「街の声」の定番スポットは、東京ならば夜は新橋、日中は銀座の中央通りだ。これが大阪では、JR大阪駅と阪急百貨店うめだ本店とを結ぶ歩道橋や、その下の横断歩道の手前であることが多い。買い物客や会社帰りのサラリーマンに対して、テレビクルーが時事問題や社会情勢について意見を聞いたり、その日の晩ご飯のおかずを尋ねたりする。

 新型コロナウイルスの感染拡大による政府の緊急事態宣言を受け、4~5月は全国の大都市と同様、大阪・梅田のこうした場所でも人影はほとんど消えた。

 駅前を歩く人が少なければ当然、電車に乗る人も少ない。下図をご覧いただきたい。関西鉄道5社(大阪メトロを除く)の鉄道輸送収入の推移である。

 3月は大阪府の吉村洋文知事が同府と兵庫県との間の不要不急の移動自粛を呼び掛け、4~5月は緊急事態宣言が出されたこともあり、3~5月の鉄道収入は大きくへこんでいる。

 とりわけ落ち込みの度合いが大きいのがJR西日本だ。近畿圏の在来線の輸送量は前年同月比で4月は29%、5月は32%、6月は62%で推移した一方、山陽新幹線は4月が12%、5月が11%、6月が32%と減少幅が大きい。

 JR西の2020年3月期通期の山陽・北陸新幹線の運輸収入は4412億円で、鉄道の運輸収入計8568億円の半分強を占める。通勤通学に使われる生活路線である在来線に比べ、出張需要が多くを占める新幹線の利用が回復しなければ、業績は厳しい。

小林一三以来の多角化に大逆風の阪急阪神
宝塚、タイガース、ホテルがピンチ

 では他の私鉄はというと、鉄道の利用は戻りつつあるものの会社の経営全体がコロナによって大打撃を受けており、極めて厳しい状態だ。沿線の人口減少を受けて多角化に努めてきた結果、鉄道以外の事業が鉄道以上にダメージを受け、大幅減収となっているからだ。JR西を含め、21年3月期第1四半期決算は全社が最終赤字となっている。そして関西の鉄道大手はそれぞれ異なる課題を抱えている。