列島明暗 都市・地方財界・名門企業#10
Photo by Tomomi Matsuno

新型コロナウイルスの感染拡大によって、福岡市が推し進める100年に1度の再開発プロジェクト、「天神ビッグバン」に暗雲が垂れ込めている。それまでの空前の需要を当て込んでいたオフィスや商業施設、ホテル開発が急転。計画の見直しやオフィス空室率の上昇、賃料の低下が懸念され始めている。特集『列島明暗 都市・地方財界・名門企業』(全15回)の#10では、九州経済の中心地、福岡の再開発の行方を追った。(ダイヤモンド編集部 宮原啓彰)

天神ビッグバンの締め切りが
コロナ対策で2年先延ばし

 アジアの玄関口、福岡市の中でも天神エリアは九州随一の商業地として知られている。その地で推し進められている行政主導の一大再開発プロジェクトが、「天神ビッグバン」だ。

 天神ビッグバンは、2014年に国家戦略特区に指定されたことを受け、福岡市が天神エリアに林立する老朽化ビルを刷新すべく15年に打ち出した事業だ。天神交差点から半径500メートル圏内の建築物の高さや容積率などの制限を大胆に緩和し、24年末までに30棟のビルの建て替えを目指す。

 エリア内のビルの延べ床面積は約1.7倍に、雇用人数は約2.4倍にそれぞれ拡大し、年8500億円もの経済効果が見込まれている。

 この天神ビッグバンの規制緩和策の中での目玉の一つが、高いデザイン性や緑化などの要件を満たすビルの容積率をさらに最大50%緩和する「天神ビッグバンボーナス(BBB)」だ。天神BBBはこれまで24年末までの竣工が条件とされていた。ところが、福岡市は8月27日、天神BBBの2年間の期限延長に踏み切った。

 その理由はもちろん新型コロナウイルスの感染拡大だ。換気機能の強化のほか、タッチレスエレベーターなど非接触設備や除菌・殺菌装置といったコロナ対策を施すビル計画に対して、天神BBBの竣工期限を26年末までに延長する。さらに複数街区にまたがる大規模再開発については、22年末までに計画の概要さえ提出すれば、26年末以降の竣工であっても個別判断でボーナスが受けられるという大盤振る舞いである。

「世界最速で『感染症対応シティー』になる」――。高島宗一郎・福岡市長は記者会見で延長の意義をそう強調し、福岡市も「コロナによって設計の変更と工事期間の延長を検討する開発事業者を後押しするためで、コロナによる開発意欲の減速などが理由ではない」と力説する。とはいえ、福岡市が当初描いていた目算がコロナにより大きく狂ったことは間違いない。

 地元不動産関係者は、深いため息をつく。「この数年好調だった福岡の不動産市況に、コロナが急ブレーキをかけた。地元不動産関係者の間では、『リーマンショックの再来だ』という嘆き節も聞こえてくる」。