安倍晋三首相の電撃辞任で、さらに先が見えなくなった新型コロナ時代の日本経済。暮らしの先行きに不安を持つ声は多い。ベネッセコーポレーションの生活情報誌「サンキュ!」が、20代~50代の家庭を持つ女性を対象に実施したアンケートによると、新型コロナの影響によって「収入が減った・減ると思う」と答えた割合が44%、「家計の見直しをした・今後したい」が55%を占めている。また、83%が「もっと節約したい」と答えているのだ。むろん収入が減れば、副業などでカバーするか、出費をこれまでより減らすほかない。しかし、中には減らすべきでないものもある。(消費経済ジャーナリスト 松崎のり子)
節約すべきでないものは、みんなが一番節約したいアレ
筆者は生活情報誌の編集者として勤めた昭和~平成の時代、節約記事をずいぶん手掛けてきたし、現在も読者として興味深く読んでいる。その経験からも、よい節約と悪い節約があると感じてきた。では「コロナ家計のニューノーマル」はどう見直すべきなのか見ていこう。
むやみに節約すべきではないもののトップバッターは、「食費」だ。そう、誰もが節約というと真っ先に思い浮かべる支出であり、ちまたには「食費節約術」があふれている。特に、外出自粛やリモートワーク・休校で「食費が増えた」と嘆く声が多く、何とか削らなくてはと焦っている家庭は多いだろう。
だが、これはやみくもに削ってはいけない。これまで家計の食費がカバーしてきたのは1.5食分程度だったのが3食になったのだから、そもそも増えて当然だ。職場ランチ分や給食分を返還してもらえれば(実現可能かは別として)トントンの可能性だってある。
さらに、この夏は気候不安のあおりで野菜の高騰が長く続き、それも食費の押し上げ要因になっている。農林水産省の食品価格動調査(8月24日~8月26日)によると、主な野菜の価格は軒並み平年以上に上がっている。さらに、数日分のまとめ買いを心掛けた消費者が多かったこともあり、1回当たりの買い物金額が上がったとのデータもある。客の心理として、買い物回数を減らすなら念のため多めに買っておかないと心配だということもあるだろう。つまりコロナ禍での食費は増えて当たり前なのだが、そこを「食費が増えた、もっと減らさないと」と控えすぎると、食事の質が低下する恐れがあるのだ。
食事はいわずもがな、健康に直結する。特に免疫力の高い体作りはコロナ対策にも欠かせない。食費を削ることより、まず野菜、肉・魚、穀類、納豆やヨーグルト等の発酵食材など、必要な食品は買ってほしい。
あまりに貧弱な食卓が続けば家族の不満も増すだろう。筆者宅も一時はモヤシのメニューばかり続いて、さすがにこれはまずいと心を入れ替えた。ただし、やたらに買い込んで、結局廃棄することが多かったり、冷凍庫に買いだめたままの食材が眠っていたりとするなら、適正量以上の食材を買っているか、買ったものの管理がまずいことになる。週に1日、冷蔵庫と冷凍庫の中身だけでメニューをひねり出す日を作るといい。案外何とかなるし、新しいメニューの発見もできるだろう。
食費は金額を減らすことよりも中身の充実度を優先すべきだ。健康な体作りは、今だけでなく将来の医療コストの節約に貢献するのだから。