没落貴族#8
写真提供:TSI、Rumi Soma

コロナ禍を受け、約300人の希望退職や百貨店向けの看板ブランド「NATURAL BEAUTY」の撤退などをTSIホールディングスが発表した。「個性のないブランドはやめる」と明言する上田谷真一社長。特集『没落貴族 アパレル・百貨店』(全9回)の#8では、TSIは百貨店依存の旧来型ビジネスから抜け出すことができるかどうかを探る。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)

ゴルフブランドは絶好調
ブランドごとに明暗

――新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が明けた後の売り上げ状況は。

 6月の既存店売上高(小売店とオンラインショップの合計)は前年同月比で90.8%、7月が80.1%でした。ブランドごとに状況を見ているのですが、前年同月比が高いから良い、逆に低いから悪いとは必ずしもいえません。

 例えばセールの売り上げがあまり大きくないブランドは、前年比が低く出ます。ですが、元々生産量を抑えていて無駄な在庫を抱えていないことが理由だったりするのです。グループ会社のアルページュのブランド「アプワイザーリッシェ」やアングローバルのブランド「マーガレットハウエル」などは基本的にセールをやらないので。

――それはコロナ禍以前からですか。

 はい。ですが、今回は特に徹底しました。完全受注生産のブランドではないので、売れ残りは出ます。でも、店頭でのセールはやりたくない。

 そこで、プレセール(シークレットセール)やアウトレットで売り切っていたのですが、今回は2月の時点から仕入れ量や生産量を抑えました。ですので、売り上げが出ていないように見えてしまう。他社は結構容赦なく店頭でセールをやっていますからね。うちのように在庫をちゃんとコントロールしている会社は、見掛けの月次の数字よりも、もっと健全なのだろうと思います。

 普通にプロパー品(定価の商品)を売っていても、前年同月比が100%を超えているブランドもあります。「PEARLY GATES」というゴルフブランドですが、これは絶好調です。

――でも、主力の「ナノ・ユニバース」は大規模なセールをしていました。

 大型ブランドはある程度セールをせざるを得ない。うちは会社としては大丈夫で、在庫も元々安定している。ただ、この状態が簡単に回復するとは思っていません。キャッシュを気にしていないわけがなく、早い段階で全社に号令を掛けて仕入れ量は7掛けにしました。

 来期に持ち越せない在庫は処分するしかないのでセールをします。ですが、来期に定価で売れるものを、換金のために3割引き、4割引きで無理に処分しなくていい。ブランドのキープと、会社が存続するためのキャッシュのキープ、このバランスを取っています。