地方エリートの没落 地銀・地方紙・百貨店#7Photo:123RF

年間売上高を上回る現預金を抱える“金満”企業の静岡新聞をはじめ、地方紙の多くは潤沢な資産を抱えている。とはいえ販売部数減には歯止めがかからず、キャッシュが乏しい一部の地方紙は存続も危ぶまれる。特集『地方エリートの没落 地銀・地方紙・百貨店』(全13回)の#7では、決算書が入手できた新聞社35社の経営体力を丸裸にする。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)

販売部数減で減収が続くも
ため込んだキャッシュは莫大

 売上高215億円に対し、現金および預金額は234億円――。2017年3月期とやや古い決算だが、静岡県の地元紙を発行する静岡新聞社は、盤石な財務体質を誇る。「うちの会社は絶対につぶれることはない」と社内で言われるゆえんである。

 販売部数の減少による売上高の深刻な減少に悩む地方紙だが、今日明日にでも倒産の危機にあるかといえば、大半の会社が実はそうではない。過去にため込んだキャッシュを豊富に抱えているためだ。

 かつて新聞は、一家で一部は購読するのが当たり前。地方都市もバブル崩壊前までは、まだ活気があった。だが、その後の不況や著しい人口減少、若者の新聞離れやデジタル化によって、部数は右肩下がりが続く。

 その間、幸か不幸か他の事業に手を出さなかったために、減収こそ続くものの、財務基盤を毀損させずに済んだ会社が多数派であったということであろう。

 とはいえ、その中でも優劣の差は如実に表れている。そこでダイヤモンド編集部では、東京商工リサーチが決算データを保有している新聞社35社を対象に二つの財務ランキングを作成。さらに、それをベースに35社の財務状況を勘案し、事業規模や販売エリアの人口減少の度合い、最新の収益動向などを加味して、地方紙を四つに分類し、その序列を浮き彫りにした。

 財務ランキングの一つ目は、売上高に対して、現預金など換金性の高い「当座資産」をどれだけ保有しているかの比率で35社をランキング。二つ目は、現預金借入金比率ランキング。借入額に対してどれほどの現預金を積んでいるか、その比率に着目した。

 なお、東京商工リサーチが保有する決算データの最新年度は各社によって異なる点についてご留意いただきたい。

 では、二つのランキングと地方紙の序列4分類の結果を見ていこう。